渦を制するものが、スピードを制する!
プロペラ機が遅い理由
お風呂やプールの中で腕を伸ばし、真横に勢いよく動かそうとしても、腕が上下に揺さぶられ、うまく動かせないでしょう。実は腕の上下にできた水の渦がパラシュートのようになり、動かす方向と逆に引っ張っているのです。また、高速道路で軽自動車を運転するとハンドルが取られ、横風を受けるとあおられてしまうのは、車体の周りにたくさんの空気の渦が生じているからです。渦の大きさは物体の大きさや形に左右されるのですが、一見理想的に見える円柱や球形でもかなり大きな渦ができます。昔のプロペラ機は高性能なエンジンを乗せても補強のために付けられたワイヤーがたくさんの渦を生んでしまうので、スピードが上がりませんでした。
空気抵抗を巡る闘い
最も渦ができにくいのは、いわゆる「流線型」です。昨今は世の中が省エネルギー化に進んでいることもあり、飛行機や自動車はどんどん流線型に近づいています。現在の自動車のCd値(空気抵抗係数)は抵抗のことを何も考えていなかった頃の1/3ほどに低下し、さらに各企業ともしのぎを削っています。一見したところではわからないのですが、2000年代に入ってからの自動車は車体の下にエアロパーツを付ける車種が増えています。
スポーツの分野での試み
渦をコントロールする試みは、スポーツの分野でも盛んです。ゴルフボールにおけるディンプルと呼ばれる凹凸はその最たるもので、ディンプルがなければボールは半分も飛ばないでしょう。スピードスケートや水泳のウェアの表面に付けられるリブレットも、水や空気の抵抗を減らす工夫です。以前はビーズなどが表面に付けられていましたが、近年は縫い目の位置を調節することで、同様の効果を狙っています。しかし圧倒的に効果があるのは、やはり全体的なフォルムです。水の中で力を抜いたとき、いかに流線型に近づけるか、各メーカーは体型を補正する試みを行っています。このように流体工学では、空気や水の渦と闘い続けているのです。
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