世界をリードする角膜再生医療の研究
従来の移植では救えない患者さんを助けたい
移植を必要とする病気の中には、ドナーの不足や、提供された臓器や組織をそのまま移植しても十分な治療効果が得られない場合があります。角膜の再生医療の研究は、従来の角膜移植では治せない病気に対する新しい治療法の模索から始まりました。
細胞注入治療で視力を回復する
角膜の再生医療で、日本は世界トップを誇る実績があります。例えば黒目の表面を覆う「角膜上皮細胞」の治療では、シート状に培養した角膜や口腔粘膜の細胞を移植する方法が2000年頃に日本で確立され、複数の大学病院などで行われた臨床試験で治療効果が確認されています。
また黒目の裏側にある「角膜内皮細胞」は、角膜の含水率をコントロールして角膜を透明に保つ大切な細胞ですが、体内では再生できない細胞で、病気やケガ、手術で損傷すると角膜が濁って視力が悪くなります。培養も難しく、従来は角膜移植しか治療法がありませんでしたが、移植したドナーの細胞が再び減ってしまうことが問題でした。しかし最近では、角膜内皮細胞の体性幹細胞の培養に成功した上、注射で細胞を移植する世界初の再生医療が開発されました。細胞の接着をよくする「Rhoキナーゼ阻害剤」という薬と、培養した細胞を一緒に注射すると、角膜内皮細胞が患者さんの目に定着しやすいことがわかったのです。
日本の再生医療を世界中の患者さんに
角膜が濁って視力が大幅に下がる「水疱(すいほう)性角膜症」の患者さんに、この治療を行ったところ、手術後は角膜が透明になり、良好な視力を回復しました。将来、1人のドナーから数百人分の角膜内皮細胞を培養することが可能になれば、大勢の患者さんを治す画期的な治療法になるでしょう。また、この体性幹細胞を使った再生医療の技術は、ES細胞やiPS細胞を用いた再生医療にも応用が期待されます。
日本発の角膜再生医療が、世界中の患者さんを救う日が待ち望まれているのです。
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