「パーソナルカラー診断」は科学か? データ分析で文化現象に迫る
文化現象をデータで分析する
文化研究において、2000年代に入ってから、データ分析を軸とした「デジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)」という分野が欧米を中心に盛んになっています。文献調査や参与観察をもとにした従来の文化研究の手法は、人間の主観が研究プロセスの中に入ってしまいやすい点が、客観性を担保する上での課題でした。デジタル・ヒューマニティーズは、そうした課題を克服しようとする流れから生まれた分野です。そのため、文化現象をデータ化して、統計学、機械学習、人工知能(AI)を活用した客観的な分析を加える点が、従来の研究手法と大きく異なります。
「メイク」の文化をデータで解き明かす
日本と韓国で流行している「パーソナルカラー診断」についての研究では、化粧品のレビューを行うインスタグラマーたちの投稿内容がデータとして収集されました。「パーソナルカラー」とは、自分の生まれ持った肌や瞳、髪の色に調和して個性を引き立てる4種類の色のことです。「イエローベース春」「ブルーベース夏」などという言葉に沿ってインスタグラマーが紹介するパーソナルカラーと実際の化粧品の色とを、RGBという色の表現方法をもとに分布図に置いて可視化してみると、意外な発見があります。客観性の高い診断だと思われているパーソナルカラー診断が、実は主観的な要素がかなり強い診断であることが浮かび上がってきます。パーソナルカラー診断は、人々が信じているからこそ成り立っている一つの文化現象と言えるでしょう。
身近な文化現象が何でも研究対象に
デジタル・ヒューマニティーズで行える研究は、メイクに限らず、映画、漫才、アニメ、音楽、e-Sports、食文化など、身近な文化も含めてどのようなものでも研究対象となり得ます。前述のメイクについては、これまであまり研究がなされてこなかった領域です。データ分析と文化を掛け合わせることで、まだ手の付けられていない新たな研究の扉を開くことができるはずです。
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先生情報 / 大学情報
同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 准教授 河瀬 彰宏 先生
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