謎の筋肉「平滑筋」の仕組みを解き明かせ!
血管や臓器に使われる平滑筋
空腹時などに、おなかからでるグーという音。この音は、胃や腸が動いている音です。胃に何も入っていなくても1時間に1回ぐらいの間隔で周期的に動き、ゴミや細菌を掃除しています。この動きの元になっているのが、「平滑筋」という筋肉です。
胃や腸のほかにも血管、消化管、子宮などさまざまな臓器が平滑筋により動きます。平滑筋は顕微鏡で見てもしま模様が見えないのが特徴です。
謎が多い平滑筋の仕組み
実はこの平滑筋は、構造も収縮メカニズムもあまり解明されていません。横紋筋は、「太いフィラメント」や「細いフィラメント」によって構成される「サルコメア(筋節)」が筋肉全体に連なり連携して動きますが、平滑筋は、サルコメアの存在は確認されているものの、それが散在しており横紋筋とは微細構造が全く異なります。平滑筋の場合、太いフィラメントが細いフィラメントの上を滑ってサルコメアを短くさせることで収縮が起こることは同じですが、細胞内で具体的にどのようにサルコメアが並んでいるかもよくわかっていません。
細いフィラメントや太いフィラメントの形や並び、またサルコメアの並びが変化するなど「リモデリング」が横紋筋に比べて起こりやすいことや、このリモデリングによって収縮が制御されているらしいことから、さらに研究が必要な分野です。
難病治療や予防につながる可能性も
「クモ膜下出血」という病気があります。通常、発作が起きて1週間位たつと血管平滑筋の異常収縮により脳血管が急に締まって、血液が通らなくなり、酸素や栄養素が脳に行きわたらなくなるという経過をたどります。そうなってしまうと、予後(よご:治療後の経過)が悪く、死に至ったり、障がいが残ったりします。クモ膜下出血以外にも平滑筋が弛緩、あるいは収縮し続けることによって発生する病気があります。もし平滑筋の仕組みがわかれば、これらの病気の治療や予防につながるかもしれません。現在、生理学ではX線回折などの最新技術を利用し、平滑筋の仕組みを調べる研究が行われています。
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