機能材料の刺激による「骨再生プロジェクト」
高齢になると骨が弱くなる
日本は超高齢社会となり、高齢者の割合がどんどん増えています。高齢になっても健康であればいいのですが、どうしても体にいろいろな不具合が生じてきます。特に高齢者になると骨が弱くなります。骨粗しょう症のような病気になる人も多いですが、病気にまでは至らなくても、高齢者は骨が弱くなってきます。そこで、弱くなった骨を材料によって改善する、さらには骨が弱くなるのをできるだけ防ぐことを目的とした「骨再生プロジェクト」の取り組みが行われています。
材料で細胞を刺激する
これは機能材料の研究者や医学、生物学などの専門家の協同による、骨の再生を材料でサポートする技術の開発の取り組みです。具体的には、機能材料が骨を作る骨芽(こつが)細胞などの骨系細胞に働きかけることで、骨を作る活動を活性化させようとするものです。もともと人間には、タンパク質の刺激によって骨を作る能力があるのですが、高齢になると骨を作る能力が弱くなるので材料によって本来の能力の低下を少なくしようとする研究です。材料として使用されるのはチタンやニオブ、ジルコニウムなどの金属、また金属だけでなく、大気中で燃焼させて酸化物とした金属も研究されています。どの物質が骨芽細胞の活性化にとって最も有効なのかが調べられています。
健康的な社会のために
実験では、金属や酸化物上の細胞がどのように活動しているかを見ます。さらに細胞にどのような刺激を与えればより効果的なのかという観点から、電気的な刺激や電磁的な刺激、さらには温めたり冷やしたりといった温度による刺激を材料から与える研究もされています。超音波による刺激は、すでに骨折の治療に活用されています。また、プラズマ処理した材料は親水性が高まり、骨芽細胞が活発になるという研究結果も出ています。
骨再生プロジェクトはまだ研究が始まったばかりで、解明されていないことも多いのですが、これから研究が進めば骨粗しょう症などの予防が進み、骨の丈夫な高齢者が増え健康的な社会になると期待されています。
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