ビタミンDは体内で変化して効く 代謝の研究を病気治療に活かす
ビタミンDは、そのままでは効果を発揮しない
ビタミンDは、骨を作るために重要ということはよく知られています。ビタミンDは紫外線を浴びると皮膚で生成されますが、食物から摂ることもでき、サプリメントも販売されています。しかし、ビタミンDはそのままでは効果を発揮できません。腎臓や肝臓にある酵素で他の物質へと変換され、これを「代謝」と言いますが、形を変えてはじめて有用な「活性型ビタミンD」になるのです。
病気の原因によって、治療法が異なる
骨がうまく作れない「くる病」は、一般的にビタミンDが不足することで起こりますが、ビタミンDを摂っても改善できない場合があります。
一つは、腎臓、肝臓の病気や酵素の遺伝子異常により、ビタミンDが活性型へと代謝されにくいケースです。その場合は、活性型ビタミンDを人工的に合成し、薬として投与します。
また、「レセプター」の遺伝子異常というケースもあります。活性型ビタミンDがレセプターにくっつくことによって骨形成にかかわる遺伝子が発現し、骨がつくられますが、このケースの場合、活性型ビタミンDを摂ってもそれがレセプターにくっつけず、遺伝子が発現しません。このため、骨がうまくつくられず、カルシウムを大量投与することで対処しています。このケースでは、脱毛症も起こりますが、脱毛症に対する治療法は、現時点では見つかっておらず、新たな治療法が求められています。
さまざまな病気の治療にビタミンDを活用
ビタミンDは骨形成以外にも、免疫、がん、アルツハイマー病などにも関与していることがわかっています。また、ビタミンDを摂りすぎると腎結石のリスクが高まる体質の人がいることもわかってきました。ただし、ビタミンDが体内でどう働いているかなど、まだわかっていない部分が多くあります。その仕組みを解明して、新しい診断方法や薬が開発できれば、既存の薬では効果のなかった人にも別の治療法を行ったり、副作用を抑えたりできるはずです。
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