コンピュータが「わかりやすい日本語」を提案する時代が来る?
コンピュータが人間の言葉を使うために
人間の言葉をコンピュータが認識して生成するためには、「自然言語処理」という技術が必要です。パソコンやスマートフォンで行う「かな漢字変換」や、人工知能の発話、機械翻訳などにもこの技術が使われています。さらに実用性を上げようと、言葉の言い換えができる自然言語処理の研究が始まりました。つづりが違っても意味が同じ言葉を認識する、意味が近い別の言葉を提案する、などが可能になれば、人間の読み書きや生活をコンピュータがさらに支援できるようになると考えられます。
言葉をベクトルに変換
コンピュータで人間の言葉を扱う時、単語や文章は数字の集合体として計算され、最終的にはベクトルで表現されます。ベクトルになった言葉はデータベース内に点在しており、コンピュータは距離の近い言葉ほど、「似ている」と判断します。言い換えの自然言語処理では、言い換え前の言葉が持つベクトルとの距離を比較し、もっとも近くにある言葉が使われているのです。
わかりやすい日本語に言い換える
言い換え技術を利用して、外国人に伝わりやすい日本語を提案する自然言語処理の開発が行われています。実現すれば、日本で暮らす外国人や、海外で初めて日本語を学習する人の助けになるでしょう。そこで、外国人に日本語を説明する時の言葉を、一般的な日本人と日本語教室の先生のような専門家からそれぞれ集め、言い換えモデルが作成されています。
一般的な日本人の場合、詳しい説明を加えるため言い換え後の文章が長くなる傾向が見られます。このモデルを使って「署名してください」をベクトルの近い言葉に置き換えると、「この紙にあなたの名前を書いてください」などの表現になります。一方で専門家の言葉で学習したモデルを使うと、「名前を書いてください」のように簡潔な言葉で言い換えられます。どちらの言い換えが伝わりやすいかは、時と場合によります。両者のモデルを組み合わせ、よりよい言い換えを実現しようと試みが続けられています。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 工学部 工学科 コンピュータ科学コース/応用情報工学コース 講師 梶原 智之 先生
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