こんなにも違う! 「戦争」の描かれ方
「映像」から見えてくる戦争
芸術や文学、文化一般において、戦争はどう描かれてきたのでしょう? 2つの世界大戦を軸に見ても、戦争とは非常に多面性のあるテーマだということがわかります。
第1次世界大戦以降の特色としては、ドキュメンタリーや戦争映画など、多くの映像が残されていることが挙げられます。映像は非常にインパクトのあるメディアですが、戦争の悲惨さを描いた作品もあれば、戦争を礼賛するプロパガンダ作品もあります。また、ヒトラーの演説の映像を見ると、いかに危険なカリスマ性があったか、よく伝わってきます。こうした映像を見ることで、戦争を止める策はなかったか、ほかにどのような道があり得たかを考えるきっかけにもなります。
「アミューズメント」としての戦争
一方、サブカルチャーの世界では、戦争は「非日常的なアミューズメント」としてとらえられることもあります。軍艦が美少女化した「艦隊これくしょん」なども一例ですし、ミリタリーおたくもいれば、サバイバルゲームで戦争ごっこを楽しむ人も少なくありません。実際、戦争には血わき肉おどる側面があり、それを描いた文学や映画も多々あります。悪いやつをやっつけるという勧善懲悪の図式は、見ていて気分が高揚するものですが、同時に警戒も必要です。わくわくと高揚するのは、自分がやっつける側に立っているからです。しかし、実際に自分が戦争で戦うとなると、そうはいきません。勧善懲悪の図式も成り立たないでしょう。
戦争を「描く」ことの意味
絵画の世界を見ると、藤田嗣治の作品に『アッツ島玉砕』があります。いろいろな解釈のできる絵画ですが、アッツ島における日本軍の玉砕場面が、陰惨ながらもある種、美学的に構築されています。しかし現場の写真を見れば、一見するとゴミと見まがうような死体は生々しくて陰惨で、美しいどころではありません。
戦争を写真で撮る、絵で描くというのは、どういうことなのでしょう? それについて改めて考えてみるのも、非常に意味のあることなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人文学科 准教授 古永 真一 先生
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