航空宇宙機の最適なデザインを考える「最適設計」
東京・大阪間をどう移動するか
私たちの身のまわりに起こる現実の問題は、ほぼすべて「多目的問題である」と言うことができます。例えば、どんなアルバイトをしようかと考えたときに、時給で決めるのか、仕事の楽さで決めるのか、選択の基準は一つではありません。このような多目的問題に対して、最適性を調べるのが、「多目的最適化」という作業です。東京から大阪に行く場合の、最適な交通手段を考えるとします。自家用車で行く方法、バスで行く方法、新幹線や飛行機で行く方法など、いくつか選択肢が考えられますが、どの方法も、最適ではないとは言えません。かかる費用を重視するのか、時間を重視するのかによって、最適な手段は異なってくるからです。ただし、選択の仕方によっては、費用も時間もそれなりにかかってしまうこともあり、そうした手段は最適とは言えなくなります。
最適な航空機の形とは?
航空宇宙機のデザインを考える場合も、多目的最適化が用いられます。航空機の設計をするときに、考えるべき要素としては、性能、燃費、重さ、騒音、製造コストなど、さまざまなものがありますが、飛行速度を上げようとすると、騒音が大きくなるなど、一方を向上させると一方が悪化するという項目が必ず出てきます。それらの項目を比較検討し、より目的にあった、最適な設計をする、それが、「多目的最適設計」というものです。多目的問題では最適な解は一つではないので、目的やニーズに応じて、機体のデザインは多種多様なものが考えられます。
失敗は決して無駄ではない
最適設計にあたっては、さまざまな設計パターンのシミュレーションを行います。膨大なシミュレーションを行う中で、最適ではない事例も多数発見されますが、それは、「最適化」としては失敗であっても、無駄な作業ではありません。失敗に関する情報を得られるのもシミュレーションの良いところです。悪い情報も知ることで、より最適な解に近づくことが可能になるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 准教授 金崎 雅博 先生
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