人口が減る都市と建築の計画 そのカギは「リデザイン」?
戦後の焼け野原の復興に向けて
建築計画学は第二次世界大戦後の日本で発達した学問です。戦争で焼け野原になり、住宅はもちろん、学校、病院などの公共施設が不足していた頃に誕生しました。不足する建物を急いで大量につくる必要があり、どんな学校をつくるのかなどを考える余裕はありませんでした。そこで登場するのが「標準設計」です。標準設計があると、全国で同じ建物をすぐに建てることができます。学校は鉄筋コンクリート造で、教室の大きさなどの標準モデルも定められました。また、住宅におけるDK(ダイニングキッチン)も、この頃の建築計画学が考案したものです。
前提がくずれた都市と建築の計画
1960~70年代になると、戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代の若者が大都市に押し寄せました。住宅不足を解消するために、各地にニュータウンが作られました。ニュータウンは都市計画と建築計画学が協力してできたのです。このように20世紀の都市や建築の計画は人口が増えること、たくさんつくることを前提にしていました。しかし日本では2008年頃をピークとして人口が減り始めています。これまでの計画理論の前提が崩れたのです。人口が減り、高齢化が進む日本で、都市や建築はどうあるべきか、新たな理論と実践が求められています。
リデザインで既存の建物と地域のニーズをつなぐ
新しい地域や建築の計画のヒントが石川県小松市にあります。廃れたお寺を再生して高齢者、障がい者、子どもなど地域の人が集まる場所にしたのです。お寺の旧本堂で高齢者のデイサービスを行うほか、障がい者の雇用も生み出されており、地域コミュニティの中心となっています。このように既存の建物を現在の地域のニーズとつなげるのが、「リデザイン」です。ヨーロッパの建物には築100年以上のものが多くあります。それらは時代のニーズに合わせてリデザインされ、使われ続けています。21世紀の日本の建築もリデザインが主流となっていくでしょう。そのお手本は、ヨーロッパの古いまちにあるのです。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類 教授 西野 辰哉(達也) 先生
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