空の安全は地上でつくる! 最新パイロット訓練の舞台裏

飛ぶ前の準備が命を守る
パイロットは飛行中、突発的な天候の変化や機械トラブルなどの予測できない状況に対応する必要があります。そのため、こうした危険を事前に察知して、対策を講じる「Threat & Error Management」が重要です。これは、隠れた脅威(threat)を見つけ出して対応策を準備しておくことで、万が一の状況でも冷静に行動できる力を養うものです。例えば、悪天候が予測される場合、事前にルートや高度の変更方法や乗客への案内の内容やタイミングまで考えておきます。飛行機は1秒間に約300mも進むほか、一度飛び立つと止まることができません。事前の準備と予測が安全を左右するのです。
地上で操縦経験を積む
パイロットの訓練は、「経験学習モデル」に基づいて、飛行経験を振り返り、それを概念化して次の状況に応用するサイクルを回すことで成り立ちます。しかし、実際の飛行を経験する機会は限られるため、地上で効率的に訓練する方法が求められます。フライトシミュレーターも利用されていますが、高価かつ設置場所が必要なため、手軽に使えるものではありません。
そこで、パソコン上で動作する簡易シミュレーターが開発されています。これは、3DCGで作成された地形の中に理想的な飛行経路に沿って飛行しながらより具体的な飛行イメージを再現するものです。積乱雲などの気象現象も立体表示され、突然現れる雲や乱気流に対して、事前に準備していた対策を試すことも可能です。
技術だけでなく人間力も重要
飛行機の操縦に必要な知識は、理系的なものだけでなく文系的なものも大きな割合を占めています。さらに、パイロットには「人間力」も必要です。エアラインにおける実際の飛行では2人で協力して操縦するため、正確で迅速なコミュニケーションが安全運航の鍵です。意見が分かれた時にどう調整するか、緊急時にどう冷静に対応するかといった能力も重要です。リーダーシップやチームワークの重要性を理解して、柔軟に対応できる人材育成が期待されているのです。
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東海大学工学部 航空宇宙学科 航空操縦学専攻 教授高橋 誠 先生
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