メキシコの建築から学ぶ、建築設計のおもしろさ
メキシコ現代建築
メキシコの現代建築を語る上で、建築家ルイス・バラガンの存在は欠かせません。ピンクや黄色などの強い色彩が施された幾何学的な造形に、巧みに取り入れられた自然光が美しい陰影をつける建築をつくり出していました。これらの手法は、リカルド・レゴレッタといった後進の建築家にも引き継がれ、メキシコの現代建築を牽引していきました。しかしバラガンの初期の作品は、ヨーロッパのモダニズム建築をそのまま取り入れた白一色のものでした。
ヨーロッパ建築の影響
ヨーロッパでは産業革命以降の1920年代後半から、それまでの歴史的な建築様式を否定し、近代の生活に即した合理的で機能的な建築を生み出していきました。この頃に提唱されたのが、地域性を排除し、世界共通の建築をめざした、インターナショナルスタイルと呼ばれるモダニズム建築です。白い箱のような水平性を基調とする装飾のない外観であり、鉄やガラスなどの工業生産材料の特性や質感を生かした建築表現になっていました。このようなモダニズムの流れは、ヨーロッパからメキシコをはじめとする諸外国に影響を及ぼしていったのです。
メキシコ独自の背景
一方で、メキシコには独自の風土や文化がありました。空が青く植栽も色彩豊かな自然環境のもとで、古代遺跡ではすでに、壁画にコチニールというカイガラムシを原料とした鮮やかなピンクの顔料が使われ、その後も民芸品やインテリアなどがカラフルに彩られるなど、鮮やかな色は地域の民族性として継承されてきました。モダニズムの影響を受けたバラガンも、次第にメキシコの地域性を融合させるようになり、独自の建築が生み出されたのです。
日本も同様にモダニズムの影響を受けましたが、その後の建築の特徴がそれぞれに違うのは、建築が地域性を考慮して発展してきたことを示しています。
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先生情報 / 大学情報
京都精華大学 デザイン学部 建築学科 建築コース 講師 川上 聡 先生
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