世界に約3000種いるシロアリ、その分類法
シロアリはアリではない!
シロアリと聞くと「白い蟻」と思われがちです。しかし、アリはミツバチやスズメバチなどと同じハチの仲間ですが、シロアリは実はゴキブリの仲間です。ただ、シロアリはその生態が、女王アリを中心としたたくさんの働きアリが1つの巣で助け合って生活をする社会性昆虫であるアリに似ていることと、木材や土壌中など日の当たらないところで生活するために白っぽいものが多いために、「白い蟻=シロアリ」と呼ばれています。同じ社会性昆虫でも、アリの場合、働きアリはすべて成虫ですが、シロアリの働きアリはすべて幼虫です。
形態での分類が難しいシロアリ
家屋害虫であるシロアリの分類は、とても重要です。シロアリは、世界で約3000種が記録されています。気温の高い所を好むため、ほとんどが熱帯地域に生息しており、日本には20数種類しかいません。
ところで、シロアリの分類はどのように行われているのでしょうか。昆虫を形態から見分ける場合には、成虫の形態がよく利用されています。ところが、シロアリは巣にいるほとんどが幼虫の働き蟻で、その形態は種によってほとんど変わらないことと、さらに体が柔らかいため観察も容易ではありません。成虫は、一年のほんのわずかな時期にしか現れないので、観察することが困難で、形態で分類することはとても難しいのです。
分類に、DNAや同胞認識フェロモンも利用
そこで、シロアリでは、常に巣の中にいる兵隊アリの頭の形で分類しています。兵隊アリの頭は硬く、形態が多様だからです。しかし、幼虫である兵隊アリでは変異が大きいため、変異の少ないものを利用して見分ける必要があります。そこで、DNAや同胞認識フェロモンを利用します。同胞認識フェロモンとは、シロアリ自身が同じ種か同じ巣の仲間かを見分けるために利用している化学物質です。シロアリの分類は、このようなDNAや同胞認識フェロモン分析といった客観的なデータを、形態観察に組み合わせて行っているのです。
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山口大学 農学部 生物資源環境科学科 教授 竹松 葉子 先生
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