ショウジョウバエで、アルツハイマー病を解明する
ハエをモデル動物として研究
アルツハイマー病は、発病のメカニズムが解明されていません。発病すると脳の神経細胞が死んでしまいます。これは特有のタンパク質が脳内にたまることが原因です。
このメカニズムを探るために、ショウジョウバエをモデル動物とした研究が進んでいます。ショウジョウバエは、立派な脳を持ち、学習もできます。記憶などの脳の高次機能の解析には非常に使いやすいモデル動物です。遺伝の点でもヒトと似ていて、遺伝子疾患の原因となる遺伝子の70%以上はヒトと同じものを持っています。
研究に好都合なショウジョウバエ
1個の遺伝子を調べる場合はモデル動物を1匹飼えばいいですが、100個の遺伝子を調べるには同じ数のモデル動物が必要です。マウスでは大きな部屋が必要になりますが、ハエなら小さなスペースで済みます。温度調整も不要でエサも安いため、限られた費用で研究を行うには好都合なのです。また、代替わりの速さも利点です。遺伝子の研究では、遺伝子操作をした次の世代まで待つ必要があります。さらに、アルツハイマー病の場合は加齢にともなう変化を調べるために、年をとらせる時間も必要です。マウスの場合は2年ほどかかりますが、ショウジョウバエは2週間程度で大人になり、2カ月で次世代に替わるのです。
アルツハイマー病を発病させる
ショウジョウバエの脳にヒトのタンパク質を入れてアルツハイマー病を発病させます。発病したハエは記憶障がいを起こし、動きに異変が生じます。ハエの記憶障がいは、においと電気ショックの組み合わせで調べます。2つのにおいの発生源の一方に電気ショックを組み合わせることで、記憶が正常なハエは電気ショックのあるにおいには近づかなくなりますが、記憶障がいのあるハエは電気ショックのあるにおいを覚えることができません。
発病したハエにどういう薬を与えたら症状が治まるか、どういう遺伝子操作をすればいいかを調べることが、アルツハイマー病治療のために役立っていくのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 生命科学科 准教授 安藤 香奈絵 先生
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