筋肉中の酸素濃度から運動能力や健康度をアップする
運動する筋肉に関係する酸素
全身を覆う筋肉には身体を動かす以外にも、人体の組織として代謝や循環などに関わる大きな働きがあります。そして運動する際には、酸素が大きく関係します。生物はアデノシン三リン酸(ATP)を分解して作り出すエネルギーを運動、つまり筋肉の収縮に使いますが、分解されたATPを元に戻しエネルギーを再び作り出すためには酸素が必要です。酸素は赤血球のヘモグロビンと結合して、血液を介して全身の筋肉に運ばれます。
筋肉中の酸素濃度を測る
運動中に変化する筋肉の酸素濃度は、皮膚に貼りつけた専用の装置から近赤外光を筋肉に当てることで調べることができます。測定した筋肉の酸素濃度は、持久力など全身の運動機能を測るスポーツ競技力の指標となるほか、生活習慣病の発症や死亡率を予想する健康づくりの指標にもなり得ます。しかし、筋肉の酸素濃度は循環や代謝に関わる様々な要因の影響を受けるため、運動でどれだけ筋肉の酸素を効率よく使うかには大きな個人差があります。
さまざまな人々・場面でQOLの改善をめざす
運動で筋肉中の酸素濃度が変化する割合が大きい人、つまり酸素をたくさん使うことができる人は、トレーニング効果が出やすいという研究結果があります。酸素を使える量は、トレーニングやリハビリによって変わっていくことが実証されています。アスリートの場合、ただ時間をかけてトレーニングするよりも、データを活用すれば、効率的な能力向上が期待できるのです。また医療においては、例えば心疾患の手術後、リハビリを始める際に筋肉の酸素濃度を測れば、この患者さんは心臓を鍛えた方がよいのか、それともまず筋肉を鍛えた方がよいのかといった判断材料にも使えます。
「運動・栄養・休養」は健康増進やスポーツ競技力向上のための3本柱と言われます。将来的に、筋肉中の酸素濃度の測定が、筋肉の「休養」を科学的に導くことや、「栄養」の取り方の改善にもつながるでしょう。
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