昆虫の社会から、「人間とは何か」を探る!
シロアリの社会にも農業や法律がある?
昆虫の種数は100万種を超え、全生物種の3分の2を占めています。その中でも最も繁栄しているのが、アリやハチ、シロアリなどの社会性昆虫と呼ばれるグループです。地球上のアリをすべて足すと1京匹、シロアリは24京匹になるという推定もあります。
昆虫の社会にもさまざまな対立や、それを解決するための法律や罰則があります。巣の防衛のために軍隊を有し、農業を行い、抗菌物質を用いて公衆衛生を維持します。我々の社会とは起源も構造も異なる昆虫たちの社会、その「不思議の国」からたくさんの知恵を読み取ることができます。
人間の社会とシロアリの社会はここが違う
シロアリの社会は人間の社会とよく似ていますが、大きな違いもあります。シロアリの社会は家族社会なので、助け合うのは血縁者同士です。働きアリや兵隊は自分自身の繁殖を犠牲にして仲間のために働きますが、それは遺伝子を共有する血縁者を助けることによって、間接的に自分の遺伝子を次世代に残すよう進化してきたからです。一方、人間の社会における助け合いが、血縁者間だけのものでないことは言うまでもありません。ではなぜ人間の社会では血縁者でなくても助け合うのでしょうか? 人間の行動は、より自分の遺伝子を次世代に残すためだけに進化してきたのでしょうか? 昆虫の社会を知ることは、人間の社会の本質を知ることにもつながってきます。
「悩める生き物」人間はどこへ向かうのか
ミームとは、後天的に言葉や文字などから得た文化的な情報のことです。これがあるから人間は、本能的な欲求と後天的に得た知恵や思想などの間で葛藤し、どう生きていくかを模索するのです。シロアリの行動は、遺伝子のみに規定されているため、ある状況でどのように行動すべきか、答えは一つに決まります。一方、ジーン(遺伝子)とミームという異なる情報伝達をもった人間は、その狭間で常に迷いながら選択しています。人間という生き物を知るためにも、昆虫の社会を研究することは非常に意義深いと言えるのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 農学部 資源生物科学科 教授 松浦 健二 先生
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