果実の皮を、無駄なく賢く利用する!
注目される、果実の機能性成分
果実の皮(果皮)など、食べ物の普段捨てられてしまう部分を役立てようとする研究が盛んに行われています。以前から、家畜の飼料とするなどの利用法は考えられてきましたが、現在は、果皮に含まれる機能性成分を有効活用しようという研究が進んでいます。機能性成分とは、食べて栄養になる以外の、さまざまな用途に利用できる成分を指します。リンゴの果皮に含まれる保湿成分を抽出し、化粧品の材料にするなどの例は、すでに実用化されています。
捨てられる果実を有効活用
多くの果樹では、未成熟の青い実の段階で、台風などによって落ちてしまうほか、「摘果」といって、大きな実を付けさせるために間引かれるなど、さまざまな理由から収穫前に使えなくなる果実が生じます。それらの大多数は、これまでは単純に廃棄されてきました。しかし、食用としては商品にならないものでも、成分を抽出することで有効活用が可能となります。このような機能性成分を用いて、サプリメントや化粧品の素材として使ったりする試みが行われています。
未成熟の実の果皮に2倍以上のノビレチン
かんきつ類は、その果皮に、糖尿病などの生活習慣病を予防する効果のある「ノビレチン」を多く含んでいます。しかも研究の結果、「サワーオレンジ」という品種に関しては、成熟期の果皮と比べて、未成熟の果皮にはノビレチンを2倍以上含んでいることがわかったのです。
これまで果実の機能性成分に関する研究は、成熟した実を分析するものが主流でした。しかし、果実の発達段階の実をそれぞれ分析することで、さらに利用できる幅が広がれば、資源の無駄を減らし、環境への負荷を低減させることができます。また研究が進むことで、ある地域でのみ栽培されている品種に特殊な成分が含まれていることがわかれば、その土地の地域活性化にもつながることが期待できます。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 農学部 生物資源環境科学科 准教授 金 貞希 先生
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