スポーツ、乗換案内、SNS~点と線で考えるグラフ理論の奥深さ~
スポーツスケジューリング
部活動の対外試合で、リーグ戦で優勝を競う大会があるとします。いくつかのグラウンドを使って総当たりで戦っていくとき、どういう順番で試合を組めばいいでしょうか。学校ごとに試合数が同じであるのは当然ですが、試合と試合との間隔もなるべく均等にならなければなりません。こうしたスケジュールを素早く正確に導き出す際に使われるのが「グラフ理論」です。グラフといっても棒グラフや関数のグラフではなく、「点」とそれらをつなぐ「線」からなる図形を用いて、その構造や性質などを抽象的に議論する学問です。スマートフォンの乗換案内アプリの経路計算も、このグラフ理論が用いられています。
巡回セールスマン問題
グラフ理論は数学の中でも少し特異な分野です。例えば、微分積分は微分を学んで積分に進みますが、グラフ理論にはその順番がありません。どこから手をつけていいかわからない難しさもありますが、同時に問題をどのように解くのかを自分で考えながら進められるのが醍醐(だいご)味です。
グラフ理論を有名にした問題に「巡回セールスマン問題」があります。あるセールスマンが複数の地点を一度ずつ訪問して自社に戻ってくる際、移動距離が最小になる経路を求めるという問題です。この問題に対する効率的なアルゴリズムはまだ見つかっておらず、現在も多くの数学者が挑戦しています。
ビッグデータの処理にも
人間同士のネットワークの解析にもグラフ理論がよく用いられます。現在、SNS利用者が世界で急増しています。既にFacebookだけで24億人(2019年)が利用しており、将来は100億人まで増えるとされています。SNSの仕組みを維持するためには、10の10乗もの人たちの複雑なつながり=ビッグデータを高速に処理する必要がありますが、現在のコンピュータの能力では限界に近付いています。人を「点」に、つながりを「線」とした数式を通して、より複雑で多様なつながりを処理できるグラフ理論が、このSNSの危機を救う可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 機械数理工学科 教授 千葉 周也 先生
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