大気環境を解析し、予測するシミュレーション技術の開発
大気汚染物質は「どこから」やって来る?
最近、「PM2.5の濃度が高くなっています」という話題がよく聞かれます。PM2.5とは大きさが2.5マイクロメートル以下の大気中に浮遊する汚染物質などの微粒子で、健康や生態系への悪影響が懸念されています。
これらの物質がどこから来て、なぜ濃度が高くなるのかということをつきとめるための方法のひとつとして、「大気環境学」では数値シミュレーションを用いた解析・予測の研究が行われています。
より確かなシミュレーションをめざして
福岡など九州地方にとっては、偏西風の風上にあたる北京や上海が大気汚染の原因物質の発生源であるという可能性は否めません。このように国外から汚染物質がやってくることを「越境汚染」と言います。排出された物質がそのまま飛んでくることもありますし、これらの物質が海洋上で化学反応を起こして、別の物質が生成されて運ばれてくるということも起こります。
このモデルをコンピュータでプログラミングし、シミュレーションするのですが、シミュレーションというのは自然環境をまねたり予測したりしているものなので、不正確な部分があります。特に海洋上で起こっていることについてはデータが少ないので、陸域での観測データや人工衛星からのデータも使いながら、シミュレーションの精度を高める研究・開発が現在も進められています。
環境政策にも役立てる
このような大気汚染のシミュレーションがより正確に行われるようになると、「いつどこで汚染濃度が高くなるか」という予測が可能になります。さらに、その予測を生かした環境政策への寄与も期待できます。例えば、排ガス規制をしようという場合、どこも一律に規制をするのではなく、どの地域のどの排出源(自動車や工場、野焼きなど)をどう抑制すれば効果的なのかというモデルを、これらのデータを基に提示し、役立てることもできるようになるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 海洋安全システム科学科 准教授 山地 一代 先生
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