講義No.09967 機械工学

自動車事故から人間をどう守るか~見えないところに光る工夫~

自動車事故から人間をどう守るか~見えないところに光る工夫~

どちらも必要なシートベルトとエアバッグ

自動車事故で守らなければならないのは乗員の命です。自動車にはそのためのさまざまな工夫が施されています。例えばシートベルトは車が衝突したときに乗員が前方に飛ばされないように胸と腰を保持しますが、ただ単に乗員を固縛しているだけではなく、肋骨などの骨が折れない程度の荷重で伸びます。さらに、より安全な自動車をめざして補助的な保護装置としてエアバッグが搭載され、より高い速度での衝突やさまざまな方向からの衝突による衝撃を受け止められるようになりました。しかし、シートベルトで乗員の衝撃を緩和させながらエアバッグで受け止めなければ、衝撃でけがをします。両方あるからこそ保護装置としての役割を果たせるのです。

安全性を高めるための検証実験と車体の工夫

車の安全性能は衝突実験で検証します。乗員の安全性を確保するためには、客室が変形しないことが必要です。例えば、前面衝突では、客室を変形させることなく、それより前の部分をきれいに潰すことで、衝突のエネルギーを吸収して、乗員を守ります。近年では、衝突実験のみならず、コンピュータシミュレーションを活用して、実験では見えづらい部分の変形の様子など、詳細な分析を行いながら、より緻密な車体構造の工夫を行い、安全性能を設計するのが主流です。

衝突試験を支えるダミーファミリー

衝突試験には、法律で決められた試験と、消費者に安全を訴求する試験があり、その試験では客室に乗員を模擬したセンサー付きのダミー人形を乗せ、主にそのセンサーの計測値の大小で車の安全性能を評価します。性別の違いやさまざまな年齢のダミーがあり、市場で頻度の高い交通事故を模擬した試験が行われます。例えば、運転席に父親、後席に母親と子どもが乗った状態で事故にあう頻度や死亡者数が多いなら、運転席に父親のダミー、後席に母親のダミーと、チャイルドシートに乳児のダミーを乗せた衝突試験が国などの機関により施行され、より安全な自動車が開発されることになります。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 理工学部 機械・精密システム工学科 講師 牧田 匡史 先生

帝京大学 理工学部 機械・精密システム工学科 講師 牧田 匡史 先生

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機械・システム工学、機械工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学ではあなたが作りたい乗り物のイメージを図面に起こし、形にすることができます。私は自動車メーカーに勤めていた経験を生かし、現場で得た知識や経験を実学として教えています。実はあなたが今まで学んだことを伸ばしていけば、世の中で活躍する技術者になれます。
例えば車の衝突について考えるときも、学校の物理で学んだ力学などを組み合わせて考えられます。難しい数式ばかり使っているわけではありません。自動車の開発に興味があるなら、好奇心を持ってさまざまなことにチャレンジし、一緒に思いを形にしていきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。