自動車事故から人間をどう守るか~見えないところに光る工夫~
どちらも必要なシートベルトとエアバッグ
自動車事故で守らなければならないのは乗員の命です。自動車にはそのためのさまざまな工夫が施されています。例えばシートベルトは車が衝突したときに乗員が前方に飛ばされないように胸と腰を保持しますが、ただ単に乗員を固縛しているだけではなく、肋骨などの骨が折れない程度の荷重で伸びます。さらに、より安全な自動車をめざして補助的な保護装置としてエアバッグが搭載され、より高い速度での衝突やさまざまな方向からの衝突による衝撃を受け止められるようになりました。しかし、シートベルトで乗員の衝撃を緩和させながらエアバッグで受け止めなければ、衝撃でけがをします。両方あるからこそ保護装置としての役割を果たせるのです。
安全性を高めるための検証実験と車体の工夫
車の安全性能は衝突実験で検証します。乗員の安全性を確保するためには、客室が変形しないことが必要です。例えば、前面衝突では、客室を変形させることなく、それより前の部分をきれいに潰すことで、衝突のエネルギーを吸収して、乗員を守ります。近年では、衝突実験のみならず、コンピュータシミュレーションを活用して、実験では見えづらい部分の変形の様子など、詳細な分析を行いながら、より緻密な車体構造の工夫を行い、安全性能を設計するのが主流です。
衝突試験を支えるダミーファミリー
衝突試験には、法律で決められた試験と、消費者に安全を訴求する試験があり、その試験では客室に乗員を模擬したセンサー付きのダミー人形を乗せ、主にそのセンサーの計測値の大小で車の安全性能を評価します。性別の違いやさまざまな年齢のダミーがあり、市場で頻度の高い交通事故を模擬した試験が行われます。例えば、運転席に父親、後席に母親と子どもが乗った状態で事故にあう頻度や死亡者数が多いなら、運転席に父親のダミー、後席に母親のダミーと、チャイルドシートに乳児のダミーを乗せた衝突試験が国などの機関により施行され、より安全な自動車が開発されることになります。
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帝京大学 理工学部 機械・精密システム工学科 講師 牧田 匡史 先生
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