数式を使って社会の仕組みを解き明かす「ミクロ経済学」
企業がつける価格について考える
ミクロ経済学では、数式を使って社会の仕組みを明らかにします。
企業が商品に付ける価格で考えてみましょう。まずはほかに企業がいない場合で、価格は最大で10とし、そこから1安くなると客が1増えるとします。これを数式で表すと「10-価格(P)=客の数(売上数)」となります。商品を1つ作るコストは3とします。この状況で、企業にとって一番よい価格はいくらでしょうか。企業の利潤を式で表すと「売上数(10-P)×1個あたりの利益(P-3)」となります。これをグラフで表すと、価格(P)が3でも10でもゼロなので、P=6.5を頂点にした山形のグラフになります。ということは、6.5が企業にとって最適な価格であり、価格は6.5になるだろうと経済学は考えます。
他企業の登場で大きな変化
ここにライバル企業が登場するとどうなるでしょうか。品質は全く同じとすると、消費者は安い方を買うでしょう。すると、もしライバルの価格が6.5なら、同じ価格を付ければ客を2分するので利潤は(10-6.5)×(6.5-3)÷2=6.125となりますが、価格を6にすれば利潤は(10-6)×(6-3)=12となり、ほぼ2倍になります。しかし、こちらが6にすると、ライバルは6より安い価格を付けてくるでしょう。価格競争の結果、最終的に落ち着く先は、どちらの企業も最適な価格を付けている状態であり、それはどちらの価格もほぼ3(=原価)になっている状態しかありません。消費者は安く買えて嬉しいですが、企業の利潤はほとんどなくなります。ライバルが1社出現するだけで結果は大きく変わってしまいます。
数式は改造できる
経済学というのは、社会の状況(上の例ではライバルの有無など)と社会での行動(上の例では商品に付ける価格)の関係性を明らかにする学問と言えます。数式を使うことで議論のポイントも欠点も明らかになります。上の例でも現実との食い違いをいろいろ感じたことと思いますが、数式を修正することで現実に近づくことができます。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 経済学部 経済学科 教授 宮川 栄一 先生
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