貴重な自然を守る意識を育む「サスティナブルツーリズム」
人類の活動が地球環境に影響を与える時代
近年、温暖化や洪水など地球規模の環境問題が各地で見られます。ここ数十年で人類による活動が自然環境に大きな影響を与えるようになってきて、「人新世」という新しい時代区分を表す言葉も生まれています。地質年代の区分において現代は、最後の氷河期以降を指す「完新世」という時代に含まれます。「人新世」は「完新世」に続く時代であり、人類の活動が自然界へ与える影響を抜きにして地球環境を語れない時代なのです。人類の活動により大量の生物の絶滅や温暖化が引き起こされ、地球のシステム自体が変化しつつあります。安定した平衡状態から不安定な状態に移行しているのです。
人口や経済開発の爆発的増加
人類が自然環境に与える影響は、農耕を始めた約1万年前にまでさかのぼります。その影響の度合いが加速化したのは戦後の20世紀後半からです。各地で経済発展が実現して、医療の進歩により人々の寿命が大きく延び、人口が爆発的に増加しました。それにより、人類の活動が地球環境に無視できない影響を与えるようになったのです。これを「グレート・アクセラレーション」と呼びます。従来の自然保護や環境保護では対応しきれない時代なのです。
貴重な自然を考える機会としての観光
観光には、自然と人々を結びつける媒介としての働きがあります。現在、最後の氷河の残る場所、またオーロラを観測できる場所として南極観光が人気を博しています。美しい自然を見て感動することは観光の楽しみのひとつですが、その自然は脆弱なものであり、場合によって奇跡的に守られていることを自覚することが極めて重要だと言えます。
必要なのは、観光を通じて自然界の危機を意識させる発信です。地球自体が根本的に変わりつつある時代は、人類の未来もどうなるかわかりません。これからの観光にはレジャーとしての楽しみだけでなく、地球全体の自然を守る意識を育む役割も求められます。それこそが、持続可能な観光「サスティナブルツーリズム」なのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 観光学部 観光学科 准教授 Chakraborty Abhik 先生
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