求められる「発達障がい領域の作業療法」の専門家
身体と精神の両面から生活機能を改善する
「作業療法」とは、病気や障がいが原因で日常生活に困難を抱えている人が、その人らしく生活を送れるように手助けをするリハビリテーションの一種です。よく、理学療法との違いを聞かれますが、理学療法が運動機能の回復、特に歩く、立つなどの身体の基本的な大きな動きの回復をめざすのに対して、作業療法では「暮らし」全般がうまくできるようになることが目的です。着替えや食事、トイレなど日常生活の動作から、支障なく集団生活を送れる精神状態まで、いきいきと滞りない生活に必要な機能すべての改善をめざすので、認知面や精神面を扱うことも多くなります。対象も高齢者をはじめ、身体や精神に障がいのある人など多岐にわたります。
発達障がいの子どもの成長を支援する
発達障がいの子どもを対象にした作業療法もあります。胎内にいるときから、18歳頃までに受けた障がいが、その人の生活に生涯にわたり影響を及ぼす場合を発達障がいととらえます。ですので、支援の対象は脳性麻痺や、精神発達遅滞、神経筋疾患など多岐にわたります。2004年から施行された「発達障害者支援法」で定義された、自閉スペクトラム症(自閉症、アスペルガー障がい)、学習症(学習障がい)、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもたちも支援の対象です。成人のリハビリテーションとの違いは、失った機能を回復するというより、新たに何かの機能を獲得していく、成長を促すための支援をするところにあります。
作業療法士の活動の場は広がりつつある
作業療法士は国家資格であり、全国に約7万人います。しかし、発達障がい領域の専門家はその約3%と、とても少ないのが実情です。一方で、2007年には、義務教育の場で障がいの子どもの教育を行う「特別支援教育」が学校教育法に組み込まれ、一般の学校現場へも作業療法士の活動の場が広がっています。子どもを対象とする作業療法士の必要性は今後も高まっていくでしょう。
参考資料
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