患者さん一人ひとりの生きる喜びを支える作業療法

患者さん一人ひとりの生きる喜びを支える作業療法

作業療法とは、生活活動療法

作業療法とは、英語の「Occupational Therapy」の訳ですが、この「occupation」は、本来はもっと広い意味で、「時間の過ごし方、活動」なども含みます。作業療法というより、生活活動療法といったほうが正しいかもしれません。
作業療法の歴史は古く、紀元前のギリシアや中国の医学などで既に、芸術に親しんだり仕事をしたりすることで人々の健康を促進させる療法が行われていたと言われています。毎日の生活を生き生きとしたものにすることが健康への早道なのだと、昔からよく知られていたのです。

生きる楽しみを引き出す

身体が思うように動かせず、以前にはできていたことができなくなると、人は気落ちし、生きる張り合いもなくしてしまいます。しかし、そのような身体の状態でも、自分なりの楽しみを生み出すことは可能です。作業療法士(OT)は、患者さん一人ひとりに寄り添い、そうした楽しみを引き出せるよう働きかけます。新しい趣味や仕事を見つける、新しい交流の場を見つけるなどもその一例です。しかし中には、やりたいことが見つからないという人もいます。その場合、作業療法士が何らかの目標を設定し、提案するという方法や、毎日の生活の中で模索しながら楽しみを見出す方法もあります。

生きるための可能性と達成感を実感

3回連続して心筋梗塞で入退院した一人暮らしの87歳の女性は、退院後、非常にさびしいのと再発作を怖れて不安にかられていました。作業療法士はデイケアでその患者さんから話を聞き、手芸が上手なことがわかったので、絵を描くことを紹介して、技術を身につけるサポートをしました。そして、できた花などの絵を、デイケアの利用者と共に楽しんだり、遠くに住んでいる娘さんへ郵送したりすることができました。1年後、この患者さんは「私は健康で、もっと長生きしたい」と言うまでになりました。病気や高齢であっても、絵を描く作業をとおして、人とのつながりや成長の可能性、達成感を実感してもらうことができたのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科 教授 ボンジェ ペイター 先生

東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科 教授 ボンジェ ペイター 先生

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作業科学

メッセージ

日本に来る前、私は4カ国で生活していました。日本の高校生の中には、宇宙人に興味のある人が多いそうですが、自分の国と異なる文化圏で暮らすということは、宇宙人の生活を間近で見るようなものでもあります。そうした異なる生活慣習を知るのは面白いことですし、人と関わる作業療法士という観点からも、非常に勉強になります。実際に、作業療法士になると、海外で活躍する機会も少なくありません。首都大学東京作業療法学科で、一緒に世界の「宇宙人」たちについても勉強しましょう。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。