遊びや運動を通じて、できることを増やす「作業療法」
「作業療法」で生活の中の困難を解決する
障がいのある子どもは、日常生活の中で困難を感じていることがあります。例えば、自閉スペクトラム症(自閉症やアスペルガー障がい)など発達障がいのある子どもは、まっすぐ座っていることが苦手な場合があります。ですから、学校で落ち着いて授業を受けるのが難しくなります。こうした困難をなくし、少しでも支障なく生活できるようにするのが作業療法です。遊びや運動などの「作業」を行ったり、生活環境を工夫することで、できなかったことをできるように導いていきます。こうして障がいのある子どもを対象に行う作業療法を、「発達障がい領域の作業療法」と言います。
遊びの動作が、リハビリテーションになる
大人なら、楽しくない作業も頑張れるかもしれませんが、子どもはそうはいきません。そこで、作業自体を楽しくするための工夫が必要になります。子どもが楽しめる玩具作りもその一つです。例えば、作業療法でよく使われる玩具に、液体と小さなビーズを入れたペットボトルを2つつないだものがあります。上下をひっくり返すと液体とビーズが流れ落ち、動きを見たり、音を聞いたりして楽しめる仕組みです。これを、ひっくり返す時に手首をひねることも、子どもには難しい動作の練習になるのです。視覚や聴覚にも豊富に刺激を与えます。
より効果的な療法の確立にはエビデンスが不可欠
作業療法の理論は、通常の子育ての中でも役立ちます。例えば、体の動きを感じ取る前庭感覚(平衡感覚をつかさどる感覚)が上手く働かないと、まっすぐ立てない、姿勢を保てないなどの問題が起こります。作業療法では、ブランコで揺れる感覚を味わうなどしてこの感覚を養いますが、これは障がいの有無にかかわらず有効です。
こうした理論を確立するには、エビデンス(科学的な裏付け)が不可欠です。発達障がい領域では疾患も障がいもさまざまで、プログラムも個別のオリジナルなので、客観的なデータを集めづらいのですが、より効果的な療法の確立にはエビデンスの積み重ねが重要になるのです。
参考資料
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