家庭ゴミからつくる? 「地産地消のエネルギー」
リサイクルは進んでいるが……
製品などを大量につくり消費し廃棄していた社会から、長く使い続け、利用できるものは資源として使い、利用できないものは適正に処分し、限りある天然資源の消費を抑える「循環型社会」づくりが重視されています。その実現には、どれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかを知ることが必要です。
日本では、この10.年で天然資源の投入が約19億トンから約13億トンに減少したことなどから、より循環型社会が進んだと評価されています。ただ、廃棄物は一定量出てしまいます。残ってしまう廃棄物をどうするか。それが環境問題の中で課題として残っています。
ゴミから効率よくエネルギーを回収
処理やリサイクルの方法はいろいろありますが、いかに環境負荷を減らしながら効率よく処理をするかが重要になってきます。実は、日本では家庭から出るゴミの約80%が焼却処理されるので、ゴミの燃焼熱を利用する高効率発電が期待されています。課題は焼却エネルギーをいかに効率よく回収するかということです。また、別の方法として台所から出るゴミや紙などの生物由来のバイオマス資源はメタン発酵させ発電などに使う方法もあります。ゴミはバイオマス資源を含み、再生可能エネルギーのひとつに位置づけられています。
温暖化対策の切り札に
ゴミの焼却というのは、火力発電と同じで、24時間安定的に行うことができます。また、人口が多い都市では排出されるゴミの量が多いので、都市から出たゴミで、都市の近くで電気をつくる、いわば「地産地消のエネルギー」です。このような家庭系ゴミによる高効率発電が全国に普及し、理想的に運転されると、原発約3-4基分にもなると言われます。
再生可能エネルギーには太陽光や風力もありますが、日照や風の状況に大きく左右される関係上、発電量が不安定になります。廃棄物からのエネルギー回収は、それを補完すると同時に、全体的に見るとCO₂排出量を削減できるという意味でも、ゴミ分野での温暖化対策の切り札ともされる、夢のある研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 高岡 昌輝 先生
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