気まぐれな太陽光発電を予測し、需給バランスを保つシステム制御
難しい電力の需給バランス予測
電力は、その発電量と消費量が、同じくらいになるように常に予測し、制御される必要があります。バランスが崩れると停電の原因となったり、電化製品に不具合が生じたりする可能性があるからです。日本では、消費電力が日中にピークになるとき、晴天ならそのおよそ4分の1を太陽光発電でまかなっています。そのため、太陽光発電量の予測が外れると大規模停電などの問題が起きてしまいます。予測は、うす曇りのときや梅雨、台風のときは難しくなります。そういう場合は、事前に火力発電の準備をしてリスクに備えます。太陽光での発電量が少ないからといって、急に火力発電の出力を上げることはできないからです。
電気自動車を蓄電池にする?
太陽光発電量が2018年現在、世界第3位の日本では、日中に電気が余ってしまうことがあります。例えば九州では2018年に発電量と消費量のバランスを保つため、一部の太陽光発電施設に発電を止めてもらう「出力抑制」を行いました。こうした問題の解決のためには余った電気を貯め、足りないときに放電する仕組みが必要です。
一つの方策として、VtoGという、車を電力系統とつなげる技術を実用化し、全国にある電気自動車を蓄電池として使う研究が進められています。車は平均すると1日に30分しか動いていないといわれています。止まっている時間を蓄電池として利用できれば、太陽光発電によってつくられた電気を、生活により役立てることができるでしょう。
太陽光発電による環境にやさしい電力システムへ
日本の電力供給システムは世界から見ても非常に安定していました。特定の電力会社の厳密な管理のもと、常に電気が消費者に一方向に流れていたからです。しかしCO₂を放出しない環境にやさしい太陽光発電を普及させると、消費者も電力を生産する立場になり、電力は双方向に流れるようになりました。太陽光発電を含めて、従来のように安定した供給ができるような電力ネットワークのシステムづくりが重要になってきているのです。
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先生情報 / 大学情報
東京科学大学 理工学系(旧・東京工業大学) 工学院 システム制御系 教授 井村 順一 先生
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