近代化が進む中で高まる自然回帰・農村回帰欲求

近代化が進む中で高まる自然回帰・農村回帰欲求

人と自然の関係性の変化

近代化が進み、文明が発展するにつれて、人と自然の関係性にも大きな変化が生まれます。現代は、お金を出せば自宅にいながら必要なものを手に入れられます。だからこそ、改めて自然への回帰を求める人が増えてきてもいるのです。それを象徴するものの一つが、テレビ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』の人気ぶりです。では、どうして人は自然に引き付けられるのでしょうか。

進み過ぎた「切り身の関係」

「自然との切り身の関係」という概念があります。これは、魚にしても野菜にしても、切り身の状態しか知らず、自然とのつながりが希薄な間接的関係性を表します。魚を釣るためにはどこに魚がいるのかを知らなければなりませんし、野菜を育てるのはノウハウが必要です。しかし、現代は誰かがそれをやってくれていて、お金を払えば面倒なことをしなくても目的を果たすことができるという「切り身の関係」が進みました。
そんな中、その対をなす「自然との生身の関係」を志向する人が増えています。草原の保全、森林や畑を荒らす害獣被害の防止など、ボランティア活動も積極的に行われています。経済的動機とは無縁の、人助けだけでなく自然と触れ合うことの楽しさを目的とするポジティブな動きです。その背景には、進み過ぎた「切り身の関係」からの脱却という、潜在的欲求があります。『ザ!鉄腕!DASH!!』は「生身の関係」の中で知り得る情報を提供するとともに、人間の持つ潜在的欲求を表現しているからこそ、多くの人の関心が集まるのです。

問われる「農的暮らし」の具体化

このように農的暮らしへの関心は高まりをみせていますが、これからの課題はその具体化にあります。欧米でも1970年代にこうした農村回帰の動きがありましたが、その際に必要となったのが産業をつくっていくことでした。日本は海に囲まれ、国土の7割を森林が占める国です。自然との直接的な関わり合いの中で生活できるような政策、保障の整備が今まさに問われている段階なのです。

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岩手大学 農学部 寒冷フィールドサイエンス教育研究センター 教授 山本 信次 先生

岩手大学 農学部 寒冷フィールドサイエンス教育研究センター 教授 山本 信次 先生

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森林政策学、環境社会学

メッセージ

森林の研究に興味を持ち、この分野に進みたいと考えているあなたには、ぜひ広い視野に立って、森について考えてほしいです。環境保全の問題、生態系の問題、あるいは木材生産の観点など、いろいろな切り取り方はありますが、すべては関わり合っていてどれもが大事なことです。今は関心の幅を狭めずにいろいろな森の見方をすることが大切です。
それから自分以外の多くの人と接してください。自分の中になかった考え方やとらえ方を知ることは、将来の大きな財産となるはずです。

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