砂丘に林を? ウルシと蜂蜜? 森林の恵みを引き出せ!
「森づくり」を人間との関係から研究する
森林は、人間が立ち入らないような原生的なものだけでなく、昔から薪(まき)や炭焼き用に利用されてきた雑木林、材木生産のために造成されたカラマツ林、災害を軽減するために造成された海岸林や防風林など、人々の暮らしに関わるものも多くあります。「森林生態学」では、森林の恩恵を受け続けるための「森づくり」を目標とし、森林そのものだけでなく、社会との関わりの中での造林研究が行われています。
砂丘に海岸林をつくるのは超難問
江戸時代以降、大量の森林伐採、製塩などにより、冬季に強い季節風が吹きよせる日本海側を中心に各地に砂丘が発達しました。そのため内陸部の田畑や河川は、塩分を含んだ砂が風で運ばれ、甚大な被害を受けるようになりました。そこで防砂や防風、高潮防備や海霧を防ぐ防霧のため、クロマツなどの海岸林が植えられるようになり、「白砂青松」と呼ばれる景観をつくりだしました。また2011年の東日本大震災では、海岸林の減災機能も注目されました。しかし、塩分を含んだ砂浜での植林・造林は非常に難しい問題です。成長したクロマツの密度管理のための手入れ方法など、森林生態学でのさらなる研究が望まれています。
ウルシとミツバチ、人間との持続可能な関係とは
漆器などに用いられる漆(ウルシ)の原料はウルシという木の樹液ですが、国内自給率が5%未満と低く、国産ウルシの増産が求められています。しかし過去のウルシ林の造成は勘と経験に基づいて行われてきたこともあって不明なことも多く、その造成・管理方法が研究されています。またウルシの種は「しいな(中身が空の種子)」が多いのですが、養蜂場の協力で、セイヨウミツバチのウルシの受粉への貢献が調査されました。その結果、ミツバチの巣箱から近い場所のウルシは受粉が促進され「しいな率」が低いことが明らかになりました。今ではウルシ蜂蜜の商品化も実現し、ウルシ林とミツバチ、人間のサステイナブルな関係が構築されてきています。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 森林科学科(令和7年度から農学部 地域環境科学科 森林科学コース所属) 教授 真坂 一彦 先生
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森林生態学、造林学、森林科学先生が目指すSDGs
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