太陽光発電を増やすと、電力供給システムが不安定に!?
絶妙なバランスで成り立つ電力の需要と供給
太陽光発電の導入が進み、一般家庭でも太陽電池を設置して、発生した余剰電気を電力会社に売る、という仕組みも広がってきました。しかし、それにともなって問題も生まれています。電力システムは、電力会社が発電量(供給)と使用量(需要)のバランスをとることで成り立っており、使用量を予測するなどして「使う分だけ発電する」という方法をとっています。しかし、太陽光発電によって一般家庭などから送られる電気は、電力会社のほうで出力をコントロールすることができません。太陽光発電が急激に増えると、電力の需給バランスが崩れやすくなり、最悪の場合、大規模停電などが発生する可能性があるのです。
電力の逆流で電圧が下がる?
また、一般家庭から電力会社へ電気を売る際は、電力が「逆流」することになります。その量が増えていくと、電力システムの電圧が上がりますが、さらに増加すると、逆に下がるという現象が起こることがわかったのです。これまで電圧が上がることへの対策はとっていましたが、電圧が下がる事態を想定していませんでした。電圧が下がってしまうと、家電製品などが正常に作動しないだけでなく、太陽光発電の制御装置であるパワーコンディショナーも働かなくなる恐れがあります。一度に多くのパワーコンディショナーが止まると、やはり需給バランスが崩れることになってしまいます。
自然エネルギーを導入していくために
これらの問題は、太陽光発電など、自然エネルギーを大量に導入しようという新しい試みの中で、明らかになってきました。自然エネルギーの導入自体は、二酸化炭素の削減などにつながり、地球環境を考えるうえでとても重要なことなのですが、急激に量を増やすことで起こる問題もあるのです。
こうした問題を解決する方策のひとつが、電力会社や一般家庭で使用されるパワーコンディショナーの制御システムを改善することです。安定的な電力供給を、適正な状態で維持し継続するために、日々研究が続けられています。
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職業能力開発総合大学校 総合課程 電気専攻 教授 清水 洋隆 先生
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