地域でいきいきと暮らすための援助を考える「精神看護学」
誰にでも起こり得る「心の病」
現代社会に生きる私たちは、さまざまなストレスにさらされています。誰もが心のバランスを崩し、心の病にかかる可能性があるのです。精神疾患は、がんや脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病とともに、国民に広く関係する「5大疾患」として、対策が求められています。
精神疾患の患者さんは、病気の症状はあっても、健康な人と変わらない部分も多くあります。看護師として患者さんと関わる際には、その人らしさを尊重し、よい所もそうでない所も含めてひとりの人間として理解することが大切です。
看護に重要な信頼関係
人間が健康的に過ごすために欠かせない「セルフケア」という考え方があります。これは、「食べる、眠る、コミュニケーションをとる、危険から身を守るなど、普遍的な欲求を自分自身でケアする」というもので、このセルフケアが病気やケガによってできなくなったときに、代わりに行うのが看護の役割です。精神看護学も、このセルフケアの考え方に基づき、患者さんが自身でできることは見守り、必要な部分を援助します。
援助を行うには、まず患者さんと信頼関係を築かなければなりません。精神疾患の患者さんは、人間関係が築きづらい場合もあるので、信頼関係を築くことは何より重要です。日々の会話を通して患者さんを理解し、安心できる環境をつくっていきます。
患者さんの生き方を支える
精神疾患は、退院後も病気と向き合っていかなければならないことがあります。症状のコントロールだけではなく、家に帰ってどんな生活を送りたいのか、そのためには環境をどのように整えればよいのか、家族や学校、職場など、周囲との関わり方をどのようにすれば地域で安心していきいきと暮らしていけるのか、看護師は、医師や薬剤師、栄養士、精神保健福祉士や心理士など、他職種の人たちと協力しながら、患者さんを援助していきます。精神看護学は、患者さんが「どのように生きたいか」を理解し、医療の目線でサポートする学問と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 看護学部 看護学科 教授 田井 雅子 先生
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