文系と理系の融合で解き明かす「言語学」の興味深い世界
ロジックが求められる、言語の体系化
言語の研究では、順序立ててその言語の特質を見ていく、論理的な検証が欠かせません。そこには必ず理論を想定し、理論を体系づけることには実証的な態度を必要とします。言葉を探究する研究は一般的に思われているような、文系の独壇場ではありません。確かにテーマとしては文系ですが、分析にはデータベースや各種のソフトウエア、ICT(情報通信技術)を使いこなすことも求められるので、理系的な発想や分析方法も必要とされます。
「コーパス」の活用で広がる研究
1つの言語を体系づけるためには実際に話されたり書かれたりした大量の言葉を観察することが有用です。そこで、さまざまな「コーパス」というデータベースが世界的に活用されています。これは簡単に言うと、生の言語資料、特にコンピュータで扱える膨大な用例集の言語資料を集めたものを指します。例えば、「こういう言い方はありますか」と誰かに問うと、答えの個人差が大きくなります。そこでアプローチを変えて、コーパスに収録された用例を検索していくことで、一定の傾向や、こんな言い方ができるということが見えてくるのです。1960年頃に始まり90年代の終わりから英語関係のコーパスはICTを先取りしてどんどんと整備されてきました。近年は日本語のコーパス研究も盛んになってきています。
言葉は変化を続ける「生もの」だから面白い
コーパスを活用していく能力が開発されれば、例えば1つの名詞から世界中の事例を数十年、あるいは数百年にわたり探索するといった研究もできます。そこには予期しない発見があるでしょうし、他国も含めた歴史や文化、産業などの関わりも見えてくる可能性があります。ある語がある年代を境に途絶えてしまったのはなぜかなど、分析を深める面白さが調査を進めるにつれてどんどん出てきます。
言葉は変化を続ける「生もの」です。それを学問として追いかけるのは、総合的に見れば非常にニッチな(すき間の)分野ですが、文と理の面白さを味わえる興味深い学問であると言えます。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 五百藏 高浩 先生
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