精神疾患の患者さんを支える「精神看護学」
後れている日本の精神疾患の地域医療
「精神看護学」とは、うつ病などの精神疾患によって、生活に支障をきたす人をサポートする看護の一分野です。患者さんへのサポートが必要なのは入院している間だけではありません。退院後のケアがとても大切ですが、地域に戻ってから誰がサポートしていくのか、という問題があります。日本でも地域に戻った患者さんと関わり合うデイサービスのようなサポートも増えてきており、連携を深めていくことも大切です。投薬についても日本国内ではまだ賛否がありますが、向精神薬も進化していて、副作用が少なく安心して使用できるものも増えています。しかし、その判断も病院によってさまざまです。昔から入院期間が短かった欧州諸国に比べて、精神疾患の地域医療で日本は後れを取っているのです。
患者さんをサポートすることの難しさ
精神看護学は、患者さんが快適に過ごせる環境づくりをサポートしていく分野でもあります。部屋の明るさや温度を、その人に合った状態にすることも、サポートの範囲となります。
手術など外科的なことは医療分野で決定することが多いですが、看護分野は言葉をかけるタイミング一つで、患者さんの状態も変わってくる難しさもあります。
看護師自身の成長も求められる
例えば、仕事を頑張りすぎてうつ病を発症した場合、「そうなる前に、その状況から抜け出せればよかったのに」というのは早計です。各個人で発症に至るストレスのしきい値(最小値)が違うので、見極めるのが難しいからです。その人の感じているストレスの状況を的確に知ることが重要なのです。患者さんの状況を理解できるようになれば、信頼関係を築くことができます。
患者さんの心を癒やすには、長い時間がかかりますし、ケースバイケースで正解は一つだけとは限りません。精神疾患の患者さんをサポートする精神看護学は、とてもやりがいがあり、看護師自身の成長が常に求められる分野でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 教授 佐藤 美幸 先生
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