地域言語(方言)が変われば、日本語(共通語)も変わる!
日本語は一つではない「ことばの多様性」に気づく
「ら抜きことば」は、「見られる」が「見れる」となる表現です。五段動詞の「書く」が可能動詞「書ける」となることから、一段動詞も「-eru」をつけるようになり成立しました。日本語(共通語)のもととなる東京語で、ら抜きことばが文献で確認できるのは、昭和初期の頃です。
「ら抜きことば」が先行していたのは、中部地方、中国・四国地方で、東京語には、東海地方から伝播したとされます。ら抜きことばは、正式には共通語とは認められていませんが、地域言語(方言)の変化が日本語(共通語)を変化させたことになります。日本語は一つではない、その多様性に気づくことが大切です。
若者語は言語接触と言語意識で解ける
「土佐ことば(高知県方言)」の若者語に「決めチョッタガッテ」という表現があります。伝統的方言では「決めチョッタガチヤ」と言います。この若者語のもととなる形は、東京語の「決めていたんだって(ば)」です。すなわち、東京語との言語接触によって生まれた新しい方言です。ほかにも関西語との言語接触が考えられる例もあり、標準語としての東京語や関西語を話したいけれども、土佐ことばも使いたいという言語意識も加わって、混交形による新しい方言が生まれたのです。
応用言語学としての国語科教育・日本語教育
日本語学では、日本語の音声・音韻、語彙(ごい)、文法、文字・表記、敬語などの体系と構造を学びます。主にことばの歴史を学ぶ「日本語史」、ことばの地域差に着目して学ぶ「方言学」、年代差(年齢差)・性差(男女差)あるいは場面差・状況差(位相差)などと社会の関わりを学ぶ「社会言語学」といった分野があります。
これらの知識を総動員して教育現場に還元する分野を「応用言語学」と言い、日本語が母語である学習者を対象にした国語科教育、外国人学習者への日本語教育があります。このように、日本語学はかなり広い範囲を射程において学ぶ領域と言えます。
参考資料
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高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 橋尾 直和 先生
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