体内エネルギーを作り出す酵素の謎に迫る
炭水化物・脂質が生命活動のエネルギー源
栄養素の働きは大きく3つに分けられます。まずエネルギー源になる炭水化物や脂質で、自動車ならガソリンの役割を果たします。2つ目は体を作る材料となるタンパク質やカルシウムで、垢(あか)となってはがれ落ちたり、傷んだりした体の部分の修復に使われます。3つ目は、体内で起こる化学反応に使われるビタミンなど、エネルギーを燃やす際に必要となる成分です。この3つの中で最もたくさん必要なのがエネルギー源で、私たちは炭水化物や脂質を燃やすことで、生命活動を行っています。
ATPは何にでも変換できる体内エネルギー
体は一旦、食物から摂取したエネルギーを「ATP(アデノシン三リン酸)」という化合物に変換して蓄えます。具体的には、「細胞内でATPを作るという形でATPを蓄える→そのATPを分解するという形でエネルギーを取り出す」といったサイクルが繰り返されており、それによって得られたエネルギーで、私たちはさまざまな活動を行っています。例えるならATPは電気のようなものです。電気が電灯をつける、エアコンを動かすなど、あらゆる電化製品の動力源となるように、ATPが体内のあらゆる活動に必要となるエネルギーの供給源なのです。
ATP合成酵素にブレーキをかける謎のタンパク質
ATPは細胞内のミトコンドリアに埋め込まれたATP合成酵素によって合成されています。ATP合成酵素は風車や回転モーターのような構造をしていて、くるくる回りながらATPを合成していくことがわかっています。絶えず回転しているわけではなく、IF1というタンパク質がブレーキとなって、ATP合成は制御されていると考えられていますが、どんなときに風車が回転し、どんなときにブレーキがかかるのか、その仕組みはまだ解明されていません。多くの研究者がこの謎に取り組んでおり、これを解き明かすことは、体の仕組みという壮大なジグソーパズルの中で、重要なピースを手に入れることなのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 生活科学部 食栄養学科 准教授 市川 直樹 先生
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