病気の元となるタンパク質の生成を阻害する「核酸医薬」
病気の根源はタンパク質!?
病気の治療に使う薬の多くは、病気の原因となっているタンパク質に結合して、その働きを抑制したり増強したりすることで作用します。現在市販されている薬のほとんどは、有効成分の分子量が比較的小さい低分子医薬品です。タンパク質の働きはその「かたち」によって決まりますが、人の体の中には数万種類ものタンパク質が存在するため、病気の元になっているたった一種類のタンパク質だけにぴったりと合う化合物を作ることは簡単ではありません。標的となるタンパク質にだけ強く結合してその働きを制御する化合物を、試行錯誤を繰り返しながら見つけ出します。そのため、新薬の開発には長い年月と大きな費用を要するのです。
DNAの塩基配列に注目
人の体を作る細胞一つ一つの細胞核の中に遺伝子情報であるDNAがあります。DNAの塩基配列はATGCの4種の塩基の文字列で表されますが、これがRNAへと転写され、さらにタンパク質へと翻訳されます。ここに着目し、DNAの配列情報を運ぶメッセンジャーRNAにくっつき、病気を引き起こすタンパク質自体の生成を防ぐことで、病気を抑制・治療するのが「核酸医薬」です。DNAは、AならばT、GならばCというように決まった塩基配列を持つ相手と対になり、二重らせん構造を形成します。この特性を活用し、病気の元となるタンパク質の設計図と対になる塩基配列のDNAを薬として投与し、設計図にフタをすれば、病気の元となるタンパク質が生成されなくなります。しかも、決まった塩基配列をもつ設計図以外には影響を及ぼさないため、副作用の心配がなくなるのも大きなメリットです。
難治性疾患の治療に期待
現在、国内で承認されている核酸医薬は6種類あります。いずれも根本治療が難しいとされている遺伝性疾患を治療するための薬です。がんをはじめとする難治性疾患の新薬となる核酸医薬の開発が積極的に進められています。今はまだ高価な核酸医薬がより一般的な薬となるように、さらなる研究が続いています。
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