ヒトのモデル動物を使った、ワクチン検定や薬の開発

ヒトのモデル動物を使った、ワクチン検定や薬の開発

動物の肝臓がヒトの肝臓になる!?

高度に免疫不全を呈するマウスを使ってヒトの器官・臓器を持ったマウスを作ることができます。このマウスにヒトの血液幹細胞を移植するとヒトの血液が流れるマウスができますし、ヒトの肝細胞を移植すると拒絶されることなく、肝細胞の80パーセントがヒトの細胞に置き換わったマウスを作出することができます。こうした動物をヒトの疾病モデルとして使うことで、HIVや肝炎といった病気の研究が進みます。

モデル作りはアイデア勝負

小児麻痺を引き起こす可能性があるポリオウイルスのワクチンは、これまでウイルスを弱毒化したものをヒトに飲ませていました(現在日本では不活化ワクチンが用いられている)。弱毒化していないとワクチンを受けたヒトがその病気になってしまいますので、これまではサルを使って弱毒化したかの検定がなされていました。マウスは感染しません。体内にポリオウイルスを受け取る受容体(レセプター)がないからです。マウスの受精卵にその受容体遺伝子をいれることで、ポリオウイルスに感染するマウスを作出した日本の研究者がいます。そのマウスを使うことで、いままでサルで行われていた、ワクチン検定が、マウスでできるようになりました。サルの扱いがとても大変であることを考えると、マウスを使ってワクチン検定ができるようになったことは驚きです。

動物実験の厳しい規制

動物愛護の観点から動物実験は世界的に厳しい規制下に置かれています。日本でも自由にできるわけではなく、計画書を作成し、何度も実験の是非を審査することで、ようやく実験にこぎつけることができます。また飼育に関しても、玩具を使いストレス軽減を図るなど、実験動物が心身ともに健康に過ごせる環境を整えることが求められています(環境エンリッチメント)。一方動物実験なしで薬やワクチンを作るのは難しく、何より効能を実証することができません。人間は、多くの動物のおかげで治せている病気があることを忘れてはならないのです。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科 教授 後藤 一雄 先生

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実験動物学、遺伝学、微生物学、生殖工学

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メッセージ

何か面白そうだと感じることがあったら、とことんまで突き詰めてください。ほんの少し調べただけで満足し、あるいは想像と違ったからという理由でやめてしまうと、そのものが持つ真の姿に気づくことができません。納得できるまで調べてみることで、意外な発見に出くわすということもあります。
実験動物学はまさにそういう分野ですし、ヒトの病気を治すには欠かせない分野でもありますから、非常にやりがいもあります。興味を持てたなら、一緒に学びましょう。

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。医学部・薬学部・医療技術学部を擁する板橋キャンパスの最大の特長は、医学部附属病院が隣接している点。学生は救命救急センターやERなど最先端の医療を、実習を通し体感できる場ともなっています。都心へのアクセスも良好であり、キャンパス最寄りの十条駅から池袋駅へ7分程度で行けますので、ショッピングなども気軽に楽しめます。