サンゴ礁の起源から知る生物進化と地球環境の変化
生物礁は生物多様性のホットスポット
サンゴ礁というと色とりどりのサンゴが海底を覆い、あざやかな魚が群れるシーンが目に浮かぶのではないでしょうか。サンゴ礁を含む生物礁は、サンゴなどの固着性の生物が成長し、長い年月をかけて次々と累積した石灰質の構築物です。生物礁を造る生物の表面や裏側には多様な生物が生息し、そこに穴をあけて隠れ家とする生物もいます。化石となって残された生物礁にも過去の生物多様性のからくりが保存されています。
さまざまな生物が生物礁を構築してきた
現在の生物礁は六射サンゴや石灰藻類が重要な構築者です。六射サンゴは中生代に世界的に出現しました。古生代には古生代型サンゴが石灰質の海綿などと一緒に生物礁を構築しました。このような石灰質の骨格を備えた生物 (骨格生物) はおよそ5億4000万年前のカンブリア紀に出現し、多様化しました。しかし、骨格生物が本格的に生物礁の構築に関わったのは、4億7000万年前頃のオルドビス紀の生物放散事変が始まってからです。つまり、この時期は、先カンブリア時代から続く微生物類による礁から骨格生物による礁へと、生物礁が大転換した時代と言えます。
大規模生物絶滅事変の後は微生物類だけの生物礁に
古生代の終わりには、地球の歴史上で最大規模の絶滅事変が起きています。およそ2億5000万年前のことです。絶滅事変前後の生物礁を見てみると、石灰質の海綿やサンゴなど多様な生物を含むペルム紀の生物礁は、絶滅事変を境に先カンブリア時代に類似の微生物類のみの礁へと大きく変化しました。絶滅事変後の悪化した環境下で骨格生物は大衰退したものの、微生物類はいち早く繁栄を始めたのです。骨格生物の構築する礁が再び形成されたのは、絶滅事変後、約500万年も後のことです。古生代末の絶滅事変がいかに生態系に大きな影響を与えたのか知ることができます。生物礁の変化は、私たちに生物の放散や絶滅、その背景にある地球環境の変化を知る手がかりを与えてくれるのです。
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大阪公立大学 理学部 地球学科 教授 足立 奈津子 先生
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