人を支えるロボットと「心」の探究

引き出される本当の自分
従来のロボットは、人の代わりに作業をこなす便利な存在として発展してきました。それが近年では、人の心の支えとなることをめざしたロボットも研究されています。
現代社会では人間関係が重要視され、承認欲求を満たすことに多くのエネルギーが費やされています。しかし、本当の安心感は「相手の関心を引く行動をしなくても自分の味方でいてくれる関係」から生まれるものです。例えば、「レンタルなんもしない人」というサービスが成立しているのは、「相手を制御しようとしない、ただそばにいる存在」にニーズがあることを示しています。ロボットを用いた実験により、若い研究者に対しては卑屈になりがちな高齢者が、誘導や評価をしないロボット相手には人生観に基づいた「名言」を語る傾向があることがわかりました。これは、ロボットの「何もしない姿勢」が、人の内面を自然に引き出すためと考えられます。
「してあげる」喜び
人は「してもらう」だけではなく、「してあげる」ことで満足感を得られることがわかっています。そこで、寒暖や明暗を認識して、人間に「扇風機をつけて」「照明を明るくして」などと依頼するロボットが開発されました。使用者がそのロボットのために空調や照明を調整すると、ロボットは「ありがとう」と礼を言います。使用者は、貢献欲求が満たされると同時に快適さも得られるという、二重の満足が生まれるのです。このようなロボットは高齢者の熱中症予防などにも役立つでしょう。
他者との関係性
また、ロボットが「君はこう考えたんだろう」と的外れな発言をした場合に、「そうではなくて」と思わず否定したくなることで、人間の発話が促進されることもわかりました。しかも、常に共感して褒めてくれる「太鼓持ち」のロボットよりも、自分の意見を持つロボットの方が好まれることも明らかになりました。このような研究は、人を支えるロボットの開発につながると同時に、他者との健全な距離感や関係性について新たな視点を提供しています。
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追手門学院大学理工学部 情報工学科 准教授高橋 英之 先生
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