子どもの「小さな悪」を受け止める
乳幼児期の「悪さ」には段階がある
小さな子どもに「悪さ」はつきもので、激しい口調で反抗したり手が出たり、攻撃性行動が見られます。大人は「悪さをしてはダメ!」としつけようとしますが、ただ押さえこむのではなく、発達段階に応じた対応が必要です。幼児期の悪さには年齢的な段階があり、1~2才は悪いとわからずにする段階、そして3~4才を分岐点として、5才になるとはっきり悪いとわかってする段階に入ります。
親との最初の葛藤、そして友だちとの出会い
子どもは1才過ぎぐらいから、いろいろ試すように、手当たり次第にモノを投げたり、壊してみたりなど悪意のない悪さを始めます。親はしつけをはじめますが、子どもにすれば赤ちゃん時代は泣きわめいても、おもらししても何でも許されていたので初めての葛藤の時期です。でも、初めて子どもを叱るのは親もつらいのです。お互いの心の葛藤の中で、子どもはここまでは親の言うことを聞こう、親はここまでは子どもにやらせてあげよう、と少しずつ「よい」「悪い」の判断基準を作っていきます。
3~4才になると、幼稚園や保育所での友だちとの遊びが大切になります。一方で、友だちは親や先生と比べると、思いが通じないことが多く、そのもどかしさが悪さとなって現れたりします。どうしたら楽しく過ごせるのか、遊びの中でルールに気づいていく時期です。
小さな悪を受け止めることの大切さ
親や保育者は、1才過ぎまではすべてを許して子どもとの信頼関係を育てること、1~2才の最初の葛藤期には性急に「よい」「悪い」の答えを出さず、子どもに寄り添って考え伝えること、3~4才の社会的な善悪を学ぶ時期には、友だちとの関係の中で子どもがどう考え行動するかを見守ってあげることが大事です。5才以降の「自覚的な悪」には、しっかりと向き合うことも必要になります。
すべての段階を通じて、「大きな悪」は戒めるが、「小さな悪」は子どもの気持ちに寄り添って受け止め、悪の気持ちをふくらませず上手にコントロールできるよう導くことが、大人の役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
兵庫教育大学 学校教育学部 教授 石野 秀明 先生
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