ハートマークは女子向け? 常識を疑うと見えてくる社会の本当の姿
常識を疑う学問
小学校入学前のある男の子が兄と一緒にランドセル売り場にいきました。彼は水色のランドセルを選びましたが、ハートの刺繍が入っているのを見て、兄は「ハートは女の子向けだから、学校で恥ずかしい思いをするよ」と、別の色を選ぶように促しました。「ハートは女子向け」「男子はハートを選ぶべきではない」というのは、果たしてその通りでしょうか?
こうした「当たり前」を疑う学問に、社会学や家政学があります。そして、現実世界にある「当たり前」が、兄の意見のような「社会」によってつくられていくという考え方を、構築主義といいます。
子どもの誕生
私たちがもつ常識の一つに「子どもは可愛く、守られるべきである」という考えがあります。しかし、フランスの歴史学者アリエスによれば、近代以前のヨーロッパの絵画では、子どもは大人がそのまま小さくなったような風貌をしており、「可愛さ」や「か弱さ」といった要素は見られません。また、当時は「親が子どもを育てるべきである」という考えが希薄で、親による子殺しや捨て子が横行しており、日本にも子捨ての記録はたくさん残っています。現代では、こうした行為は厳しく罰せられますが、それは後の近代化によって「子どもは慈しむべきである」という常識がつくられてからの話です。
生身の人間が生み出す社会
しかし、現代の子どももすべての権利を保障されているわけではありません。現代になると「子どもは親と一緒に暮らすことが望ましい」という価値観が強くなりすぎて、親に問題があり、一緒に暮らすことが必ずしも子どもにとって最善でない場合であっても、「家族から離れて生きる」という選択をしにくい状況が生まれているのです。
このように、ジェンダーや家族といった身近なテーマにおいても、そこにある常識やそれに対する感覚は、時代によって異なります。時々の権力や価値観、社会のあり様が複雑に絡まり、生身の人間がつくり出していく社会の本質に迫るということも、社会学や家政学の重要な役割といえるでしょう。
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ノートルダム清心女子大学 文学部 現代社会学科 教授 山下 美紀 先生
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