信頼できるデータ収集のための、エアロゾルの測定方法と機器の開発

信頼できるデータ収集のための、エアロゾルの測定方法と機器の開発

科学の大前提となるデータ、どう測る?

科学的にものを考えるにはデータが欠かせません。例えば大気を構成する窒素、酸素、二酸化炭素などの気体成分については、濃度や性質など多くのことがわかっていますが、これは長い測定分析の歴史があるからです。しかし大気中に漂う微粒子、エアロゾルについては、まだまだデータが足りません。理由は測定の難しさです。多くの物質が微粒子として交じりあっていて、何か一つを測定すればよいわけではないこと、常に大気が流れて時間と共に変化してしまうこと、微粒子の形や大きさで力学的な性質や人体への影響などにも違いがあり、これらの測定も必要なことなどが課題です。

微粒子の化学組成や大きさを連続して測りたい

エアロゾルの測定には、ろ紙で粒子を長時間集め、それを後で分析する方法がありますが、これでは測定地点での、測定した時間内に含まれる成分の平均値しかわかりません。また、空気中の微粒子の全体量(重さ)を測ることも可能ですが、この場合は成分の詳細はわかりません。そこで、現場で短時間のうちに粒子の主要な化学組成や大きさを測定できる機器が開発されました。こうしたデータを連続して集められれば、微粒子のでき方や濃度の変化をとらえることができ、粒子の生成、消滅過程などより詳しい理解に近づくはずですが、まだまだ改良途中です。

分析化学に欠かせない「ものさし」作りにも挑む

測定機器の開発に加えて、測定のための基準作りも重要です。例えば気体の濃度を測る場合、成分が一定した「標準ガス」をものさしとして使います。二酸化炭素の濃度の測定には、0.1ppm単位の精度が必要とされますが、ものさしとしての「標準ガス」が確立しているからこそ、二酸化炭素の測定データは信頼されるのです。エアロゾルの場合も、どの精度で測れば知りたいことがわかるのか、それを測るための「標準」をどう設定するかといったことから考えていく必要があるのです。

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東京都立大学 理学部 化学科 教授 竹川 暢之 先生

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大気化学

メッセージ

私は大気環境中の化学物質の分析に関する研究を行っています。環境分析で大事なのは、ものを正確に測ることと、それを地道に長く続けることです。例えば、オゾンホールやCO2について多くのことがわかっていますが、これも先駆者の方々が何十年にもわたって地道な研究を続けてこられた積み重ねによるものです。そういう地道な研究を続けていく足掛かりになるのが、物理や化学などの基礎学問です。あなたもぜひ、目的を持って、その基礎となる勉強を頑張ってください。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。