違うもの同士の共通項を発見する「比較文化学」
「なぜ?」という疑問から、課題を自分で設定
比較文化学という学問は非常に切り口が広く、「課題発想」というアプローチが重視されます。先生が課題を与えるのではなく、学生自身が日常生活の中や海外に行った時に「あれ、おかしいな? どうしてだろう?」と引っかかったことを課題化し、掘り下げていく姿勢が求められます。
例えば、ドイツへ行ってテレビの天気予報を見ると、違和感を覚えます。その原因は、「晴れ」を表す太陽マークの色が黄色だからです。日本の天気予報は赤い太陽で、日の丸の国旗も赤で太陽をあらわしています。文化によって太陽を表現する色が違うのです。
常識をくつがえす「負のフィードバック」
ロシアの民芸品マトリョーシカのルーツは、19世紀末に箱根にやってきたロシア人修道士が土産に持ち帰った、こけしをはじめとする箱根細工の入れ子人形だという説があります。また、和菓子だと思われている金平糖は、実はポルトガル語が語源の南蛮菓子です。
常識だと思っていることも、視点を変えれば意外な事実が見えるということが、身のまわりにはたくさんあります。これを「負のフィードバック」と言い、違う視点から見ることが新たな発見をもたらします。異文化を知るには海外へ行くことも大切ですが、自国にいて身のまわりの自文化を掘り下げれば、意外な発見があるものです。
複眼的な思考をしよう!
日本人が見過ごしている郷土文化や伝統にも、外国人には新鮮な価値があるかもしれません。異文化を理解するには自文化への深い理解が必要ですし、自分と他者、ローカルとグローバルなど複眼的な視点が欠かせません。
「比較する」は英語でcompare、ドイツ語でvergleichen、どちらも語源に「同じ」という語が入っています。つまり欧米では「比較」という考えには違うものの中に共通項を見出すという意味がもともとあったのです。比較文化学はさまざまな学問を横断し、違う分野の中に「そうなのか!」「なるほど!」という関連を見出す、興味深い学際的な学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 教授 依岡 隆児 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
比較文化学先生への質問
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