スウェーデンの絵本に描かれる「子ども」像から日本を見つめる
絵本に描かれる自立した「子ども」像
絵本大国である北欧・スウェーデンの代表的な絵本作家、ピヤ・リンデンバウムの作品では、子どもは自立した存在として描かれています。主人公の子どもは日常生活でさまざまな問題にぶつかりますが、自分の気持ちと向き合って解決していきます。そこに大人はあまり介在せず、ときには問題を抱えた存在として描かれることもあります。また、これらの作品には、シングルマザーやステップファミリー(血縁のない親子関係や兄弟姉妹関係を含んだ家族)、同性同士のカップルなど多様な家族が出てきます。
子どもに開かれたスウェーデンの文化
こうした子どもの描かれ方は、スウェーデンの子ども向け舞台芸術でも共通しています。子どもの日常や目線を大切にし、大人が何かを教え込むというよりは、子どもを自立した存在として尊重しています。絵本や舞台芸術を制作しているのは大人ですから、大人が子どもの権利を尊重しているともいえます。
こうした姿勢は、子どもが文化に触れる機会の提供にも見られます。図書館にはゆったりとした児童書コーナーがあることが多く、最近では3Dプリンタが使えたり、楽器演奏やゲームができたりするところもあります。学校での演劇公演は無料で鑑賞できます。社会的環境や家庭環境に関係なく、あらゆる子どもに文化芸術を届けようという工夫がされています。
スウェーデンの文化から日本の姿を見つめる
では、日本では子どもはどう見られているでしょうか。子どもが「自立した存在で、権利を持った一人の市民である」という意識は薄いかもしれません。社会が子どもをどう見ているかは、さまざまな弱者に対して社会がどう接しているかにつながります。外国の文化や文学に触れるということは、自分はどのような社会で暮らしているのか、どういう社会で生きていきたいのかについて、新たな視点を得るきっかけにもなります。絵本に限らず、スウェーデンの文化からは、日本をより多くの人にとって住みやすい社会にするためのヒントが得られるのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 文化社会学部 北欧学科 准教授 上倉 あゆ子 先生
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