がん予防対策を支える「公衆衛生」と「疫学」
公衆衛生とは?
公衆衛生とは、わかりやすくいうと人々の生命や生活を守ることです。医療が病気やけがを負った患者を対象に医療機関などが行うものである一方、公衆衛生は健康な人をふくめた集団を対象に、社会的活動として実践されるものです。集団の予防医学が主な役割で、一次予防(健康増進・病気発症予防)、二次予防(早期発見・早期治療)、三次予防(社会復帰やリハビリテーション)など多岐にわたります。そのために必要不可欠なのが「疫学」です。これは過去の歴史や地域の中で、どんな病気が流行し、その原因は何なのかなどをデータ収集して研究する学問です。疫学で導き出されるエビデンスを基に、病気を予防するための社会的対策をとることが、公衆衛生の大きな役割です。
「がん」を予防するには
予防医学の対象となるのは、新型コロナウイルスなどの感染症から生活習慣病までさまざまですが、その一つに「がん対策」があげられます。日本人の死因で最も多いのはがんです。昔は「がんにかかると助からない」と言われていましたが、現在は早期発見・早期治療、治療法の進歩により、生存率が上がってきています。医学の進歩はもちろんのこと、がん予防対策が進んでいることも大きな要因です。そしてがん予防対策を行うために必要なのが、正確な「疫学データ」です。
疫学データに基づくがん対策
2016年に開始した「全国がん登録」では、がん登録の基準が定められて、全国同じ条件でがんの実態を正確に把握できるようになりました。そこから得られるデータを基に、り患率や生存率を算出し、各種がん対策の具体的な手法が検討・評価されています。
さらに「たばこを吸う人と吸わない人での肺がんり患率の違い」などの疫学研究から、生活習慣の影響を明らかにして予防活動を実行します。早期発見・早期治療のためのがん検診の普及や、がん治療後のQOL(生活の質)の向上やリハビリテーション・社会復帰へ向けての支援など、がん対策のインフラづくりが着々と進められています。
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