サバンナからテーマパークまで、数式で答えを出す!

サバンナからテーマパークまで、数式で答えを出す!

生物の個体数を数式化する

世の中で起きているさまざまな現象を、微分方程式などの数式の形で表すことを、「数理モデル化」と言います。そのためには、「個別の現象の本質をとらえて抽象化する」という手順が必要です。
例えば、サバンナに生息する動物の個体数を予測するためには、同じエサをとりあう動物が何種類いるか、それらの動物がどのような関係性であるか調べた結果を数式にまとめていきます。その数式を計算することで、個体数が将来的にどうなるのか予測して、生態系のバランスを維持するために必要な要件が導き出せます。
数理モデルは、ある問題を調べる際に、現実世界で実験を繰り返す、サンプルを抽出して調べる、といった手間とコストのかかる作業を行わずに問題の予測ができるというメリットがあります。

人気アトラクションに必要な面積は?

さまざまな現象の中でも、水に溶けていた物質がほかの物質と結合しながら広がっていくといった、反応と拡散が同時に起こるような現象を表す数式を「反応拡散系」と呼びます。反応拡散系は、前述のような生物数の増減や、人間の行動などにもあてはめられます。
数理モデルは、個別の現象ではなく、抽象化した問題に対して答えを出せるので、化学の分野と経営学の分野で同様の数式があてはまるようなことが起こります。例えば、テーマパークのあるアトラクションがどのくらい人気があるかなどのデータを数式化すれば、混雑度を予測して、入場を待つ列にどの程度のスペースが必要かを算出できます。

インフラの老朽化も予測できる

数理モデル化においては、関わる要素を厳密に数式にしていくと複雑になりすぎるため、ある程度単純化する手法も取られています。しかし、それによる答えはあくまで近似値で、正確ではありません。複雑な数式をそのまま計算する手法が進んでいけば、複雑な反応拡散の問題にも対応できるようになります。将来的には、コンクリートの劣化によるひび割れなど、インフラや施設の老朽化を計算で予測することが可能になる時代が来ると考えられます。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 工学部 数理工学科 講師 森 竜樹 先生

武蔵野大学 工学部 数理工学科 講師 森 竜樹 先生

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応用数学、数理工学、数値計算

メッセージ

私は昔から数学は好きでしたが、計算が苦手でした。しかし、こつこつと粘り強く勉強をがんばることで、今はこうして数学を仕事にすることができるようになりました。何か苦手な部分があるからといって、好きな分野から離れてしまうというのは残念に感じます。その苦手は別の技術で解決できることかもしれません。だから、粘り強く、自分が本当に知りたいと思えることに向き合ってください。大事なことは、自分がやりたいかどうか、そして、自分で何かを考えたいかどうか、だと思います。

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。