日常に潜む「思い込み」を言語の側面から浮彫りにする応用言語学
応用言語学の研究対象は社会全体
応用言語学の研究の題材は身の回りにいろいろあります。例えば、日本の大学で「ネイティブスピーカーの人は手を挙げてください」と投げかけても手は挙がりません。日本人は日本語のネイティブスピーカーですが、「ネイティブスピーカーとは英語を話す欧米系の白人」と思い込んでいる人が多いからです。では、その思い込みはどのようにして作られたのでしょうか? それを言語教育や言語習得の視点から解明しようというのが応用言語学です。言語学といっても、文法や音声を勉強し、会話ができることだけに重きをおいているのではありません。
問いを立て検証を繰り返す
応用言語学では、言われなければ気づかないほどの「これっておかしいよね」に注目して検証します。例えば、2つのクラスに同じ英語の音声を聞かせ、片方のクラスにだけ話者の写真を見せます。そして、聞き取りやすいもの、英語の教材として使いたいものを選ばせます。この実験での話者は、小池百合子氏、元英国首相サッチャー氏、オバマ大統領夫人ミシェル・オバマ氏でした。写真を見せたほうはサッチャー氏を選び、見せなかったほうは小池氏を選びました。この結果から、聞き手は話者の外見に左右されることがわかります。しかも聞き手はこうした実験をされるまで、自分の先入観に気づかないこともあります。
必要なのは正誤よりも良いコミュニケーション
応用言語学では言語を通じて社会全体に目を向け、ときには脳科学、社会学などほかの学問にもまたがる多角的視点を持って研究を進めていきます。今までの常識を疑い、自分ならではの代替案、解決策を考えることが重要です。
現代日本において、外国語は深く日常に入り込んでいます。言語は話者の文化も含んでいます。和製英語は英語としては間違いとされても、すでに日本語の一部なのです。応用言語学は応用コミュニケーション学でもあり、何語だと区別して正誤を問うことより、その場で意味をなすことのほうが大切だという基準で考えるのです。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 文学部 英語教育学科 教授 小田 眞幸 先生
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