再生医療でスポーツも老化も諦めない!

再生医療でスポーツも老化も諦めない!

スポーツ選手を支える整形外科

スポーツ選手は、試合当日に最高のパフォーマンスを引き出すために、日々厳しい練習を積み重ねます。そのため、けがや体調不良を引き起こすことも少なくありません。整形外科は、スポーツを含めた身体活動を支える骨や関節、筋肉などの運動器と呼ばれる部分の疾患を扱う診療科です。

幹細胞を増やしてけがを治療

スポーツ選手の中で比較的多いのが、肘や膝などの関節軟骨の損傷です。関節軟骨は、関節の内側を覆う弾力性のある組織であり、関節でつながった2つの骨の滑らかな動きをサポートしています。ところが、関節の過度な使用により軟骨の表面が損傷すると、関節を動かす時に痛みや動きの制約が生じてしまいます。軟骨は自然修復できないため、以前は傷がつくとほとんどの場合はスポーツを諦めるしかありませんでした。しかし、現在では再生医療の進展により、軟骨の治療ができるようになりました。人間の体内には、失われた細胞を補充する能力のある幹細胞が存在しています。体内の細胞が損傷すると、その信号を感知して幹細胞が増殖し、損傷した組織を修復しようとします。しかし自然治癒能力には限界があるため、一定の範囲を超えた疾患や損傷は、幹細胞の修復機能では追いつきません。そこで、幹細胞を体外に取り出して培養し、増やした幹細胞を損傷した組織に戻すことで再生修復を促進します。この方法は2013年に保険適用が認可され、すでに実際に治療に取り入れられています。

高齢者が健康に過ごすために

スポーツ選手だけでなく、高齢者の運動機能の低下も運動器の治療により改善できると考えられています。日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超える一方で、健康に過ごせる期間の健康寿命との差は女性が約10年、男性が約8年もあります。この差は、介護が必要になるなど制約のある日常生活を過ごさなければならない期間を示しています。この期間を短くするためにも、再生医療の活用も含めた老化の改善が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 医学部 医学科 教授 黒田 良祐 先生

神戸大学 医学部 医学科 教授 黒田 良祐 先生

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整形外科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

医師は、患者さんから多くの情報を引き出すことで正しい治療につなげています。身体のどこが不調で、何に困っているかを聞いて理解する必要があります。そのためには、自分自身に豊かな人生経験が必要です。例えば、患者さんがスキーでけがをしたとしても、スキーをした経験がなければ、けがをした時の状況を想像することは難しいでしょう。医学とはまったく別のことを、今のうちからたくさん経験して蓄積し、いろいろな状況において対応できる物怖じしない精神を身につけてほしいです。

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