1000年間、シルクロード交易を担ったソグド人の軌跡

1000年間、シルクロード交易を担ったソグド人の軌跡

正倉院の宝物を運んだのは誰か?

奈良県の東大寺正倉院には、明らかに日本以外で作られた品々が、数多く収蔵されています。その1つが「白瑠璃碗(はくるりわん)」と呼ばれるガラスの器です。とてもよく似た器が現在のイラン周辺から多数見つかっており、「シルクロード」を通って日本へもたらされたのではないかと言われています。シルクロードはユーラシア大陸を東西に結ぶ交易路のことです。紀元前後から11~12世紀までの約1000年間、シルクロードの交易をほぼ独占した民族がいました。それが「ソグド人」です。

オアシスの民「ソグド人」とは

ソグド人は、中央アジアの「オアシスの民」でした。現在のウズベキスタン共和国とタジキスタン共和国の一部に当たる地域です。東西が交錯する地点だったことと、オアシス農耕では生きていける人口に限界があったことなどから、ソグド人は自らシルクロードの交易を担ったと考えられています。
ソグド人の交易の様子は、中国で見つかった石碑から徐々に明らかになってきました。彼らは数百人という単位で移動し、移動先に集落を作りました。そうした集落は中国の広い地域に分布し、それぞれの地で政権の支配を受け入れ、あるいはその庇護(ひご)のもとで交易を続けていたようです。彼らの力は商業だけでなく政治や軍事にも及び、唐王朝の建国を手助けするなど、中国の歴史に少なからず影響を与えました。8世紀には姿を消したと言われていたソグド人が、ここ10年ほどの研究の進展によって、11~12世紀まで活躍していたこともわかってきました。

日本にも残るソグド人の痕跡

ソグド人の痕跡は、日本にもあります。ソグド人の特徴である「深目高鼻(しんもくこうび=窪んだ目と高い鼻を持つ彫りの深い顔つき)」のお面が、正倉院にあります。中国から日本へ渡った鑑真の一行にもソグド人がいたことがわかっています。はるか西方のシルクロードの民族と日本との不思議なつながり、そこにどんな関係が存在し、今に伝わるのか、歴史のロマンは果てることがありません。

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日本女子大学 文学部 史学科 教授 山下 将司 先生

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