遺伝学の始祖、メンデルの功績とは
約150年前に遺伝の本質を解明したメンデル
「メンデルの優性・分離の法則」とは「優性と劣性を掛け合わせると、子どもには優性が出る。その子ども同士を掛け合わせると、3対1の割合で優性と劣性が出る」という法則です。
メンデルは、修道院に所属しながらエンドウマメの交配実験を15年間行う過程でこの法則を発見し、1866年に論文を発表しました。この現象を遺伝子や染色体といった言葉を使わずに説明することは、実は相当難しいのですが、彼は「雑種は優性形質を伝える生殖細胞と、劣性形質を伝える生殖細胞を同じ数ずつ作る」という簡潔な表現で、見事に遺伝の本質を説明しています。
理解されなかった論文
しかし、当時メンデルの論文は理解されませんでした。エンドウマメは純系が入手できたので遺伝現象がはっきりと現れたのですが、そのほかの生物では遺伝現象は少しずつしか現れなかったので、あまり顧みられなかったのです。それに、同じ時期にダーウィンが進化論を発表しており、生物学者たちはそちらのほうに興味を奪われていたこともあります。
そもそもこの時代の生物学はまだ遅れていました。生物は必ず生物から生まれるという、今では当然のことがわかったのも1861年のことなのです。
埋もれていた功績
そのため、メンデルの論文は埋もれていきました。その業績が再評価されたのは1900年になってからです。このころ3人の生物学者がほぼ同時に同じ法則を発見したのですが、調べてみると数十年前に同じことをやっている人がいたということが明らかになったのです。その後、遺伝の研究は格段に進み、1930年代に染色体に遺伝子が乗っていることが、1950年代に遺伝情報がDNAという物質であるということが確認されました。
しかしこうしたことがわかる前に遺伝の本質を明らかにしていたことが、メンデルの偉大な点なのです。
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